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東京23区「安心・安全な街」~あなたが住む地域の真のリスクと防災力

中野区――木造住宅が多く道幅が狭い「業火ベルト地帯」に、防災の灯火が点る

池田利道 [一般社団法人東京23区研究所 所長],小口達也 [一般社団法人東京23区研究所 上席研究員],一般社団法人東京23区研究所
【第13回】 2011年10月19日
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 フォークソングの名曲『神田川』。中野区の末広橋近くに、その歌詞碑がある。山手通りと環七の間が「木賃(もくちん)ベルト地帯」と呼ばれたことは、本「東京23区シリーズ」でも何度か触れている。

 下町の長屋も木造賃貸住宅に変わりはないが、“モクチン”という響きには、中高年世代にとって甘く切ない思い出がよぎる。そう、『神田川』の世界である。

 ところが昨今は、「木賃」ならぬ「業火ベルト地帯」と言うらしい。何とも味気ないが、リスクの実態は否定できない。

「業火」をもたらす木賃ベルト地帯
木造住宅が密集し道路が狭い地域柄

 高度経済成長の時代。東京に流入する人々に、住まいの受け皿を提供したのが木賃住宅だった。中野区はその一大集積地であり、現在も木造建物の密度が23区で最も高い。

 宅地率2位、宅地に占める住宅用地比率2位、オープンスペース比率22位、不燃化率21位。どのデータを見ても、中野区が木造住宅の密集地であることを示すものばかりである。

 かたや、都市計画の対応は大きく立ち遅れた。その典型が道路だ。道路率22位、平均道路幅員23位、幅員3.5m未満の道路延長比率1位、幅員3.5m未満の道路延長比率は44%に上る。区内の道路の半分近くが、消防車がまともに入って来ることができない狭さであることに、中野区が抱える都市構造の課題が象徴されている。

 住宅地という特性もあって、中野区は出火のリスクが特に高いわけではない。東京消防庁のシミュレーションによる震災時の出火危険度は、ほぼ23区の平均並み。だが、60分後の延焼危険度は23区平均の1.7倍となる。360分後には2.3倍へと増えていく。一旦火が出ると止まることなく燃え広がる様は、まさに「業火」と呼ばざるを得ない。

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池田利道 [一般社団法人東京23区研究所 所長]

一般社団法人東京23区研究所所長。東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。

小口達也 [一般社団法人東京23区研究所 上席研究員]

一般社団法人東京23区研究所上席研究員。1978年より財団法人・東京都政調査会研究員、都市問題・自治体政策の研究に従事。87年より中央大学社会科学研究所・客員研究員、多摩地区の地域開発研究に従事。その後、フリーを経て現職。

一般社団法人東京23区研究所

東京23区をさまざまな角度から調査・分析している。マーケティングレポートなどを発行。HPはこちら


東京23区「安心・安全な街」~あなたが住む地域の真のリスクと防災力

東日本大震災を機に、自分が住む地域の安全性を気にする人が急増している。世間一般に「安全」と言われている街でも、そうとは限らない場合があるし、「リスクが高い」と言われていても、本当は災害への耐久力が強い街もある。実際のところ、あなたが住む街の安心・安全度はどうなっているのか。この連載では、地震、犯罪、火事、交通事故といった現代社会の4大災難を中心に、東京23区の「防災力」をあらゆる角度から分析する。豊富なデータを基に、「安心・安全な街」の条件を考えてみよう。

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