莫大なコストをかけて建設された豊洲新市場は活用しつつ、「TSUKIJI」として海外にも知られた築地市場跡地を「食のワンダーランド」として活性化する――。そんないいとこ取りのアイデアが実現できれば、素晴らしい。あくまでも本当に実現できれば、の話だが。

 ところで、豊洲新市場を建設したがために、東京都の市場会計の企業債残高、すなわち借金は、18年3月末見込みで約3600億円存在する。

 小池氏の都知事就任前は、築地の跡地を民間に売却することで、この借金の返済に充てる計画だった。だが小池氏は、築地を売却せずに都で保有し続け、前述の再開発によって民間から地代収入を得て、これを返済に充てる方針に切り替えたのだ。

 小池氏の方針転換を受けて都の事務方は、21年度から50年間、1年あたり160億円の地代収入を得続け、かつその途中で企業債を借り換えれば、大きな資金ショートを避け、累積赤字を54年度に解消できるとの試算をはじいた。

 逆に言えば、築地の再開発で毎年、160億円の地代収入を50年間得続けなければ、累積赤字の解消はままならず、深刻な資金ショートに陥ってしまう。小池氏が6月の記者会見で語った「豊洲で累積してしまう、将来への負の遺産は残してはならない」との宣言は、実現できなくなるのだ。

築地で表参道並みの賃料設定
あまりに非現実的な都の試算

 築地の再開発によって、本当に年間160億円の地代収入を稼ぎ続けることが、できるのか。専門家への取材に基づいた本誌の検証では、答えは「ノー」だ。

 まず、前出の都の事務方の試算を詳しく見てみよう。160億円地代収入の積算根拠は、貸付面積全体から道路想定部分を除いた17.2万平方メートルのうち、事業用地を11.3万平方メートル、住宅用地を5.9万平方メートルと設定。貸付料の料率については、事業用地は、豊洲に建設予定の「千客万来施設」、住宅用地はなんと、「港区北青山3丁目地区の実績に基づく」との記載がある。

 港区北青山3丁目と言えば、東京メトロ表参道駅がある交差点の周辺だ。商業地としては、今年7月1日時点の基準地価で1平方メートル当たり2420万円と、東京でも、いや日本でもトップクラスの価格だ。一方で築地の商業地は、最高値の築地3丁目でも196万円と、桁が違う。