美辞麗句を並べただけ
築地活用プランの危うさ

 より面積の広い事業用地については、豊洲市場に隣接して建設予定の温浴施設や飲食店などからなる「千客万来施設」を目安に、地代収入の料率が設定されている。

 ただし豊洲に実際に建設予定の施設は、延べ床面積が計約4万1900平方メートルだ。これは敷地面積ではなく、延べ床面積であることに留意されたい。

 築地の事業用地は敷地面積で11.3万平方メートルあり、ここに施設を建設する場合、一般的に考えれば延床面積はより広大なものとなるはずだ。果たして施設を全て埋めるだけのテナントを誘致できるのか、大いに疑問だ。豊洲に実際に整備される施設とも競合する。

 なお、これら都の事務方の試算は、小池氏の指示を受けて、築地の跡地を売却した場合、保有し続けた場合など、複数のケースについて前提を変えて計算した結果の一部にすぎない。

 肝心なのは、小池氏が試算をどのように吟味し、自身の結論を出したのかである。6月20日の記者会見で、小池氏はどのような結論を出したのか、会見の配付資料から見てみよう。

「仲卸の目利きを活かしたセリ・市場内取引を確保・発展」「築地のノウハウを生かした消費者向け新事業(商業、外食、教育、芸術、スポーツ等)」「地域との一体化で一大観光拠点として発展」「食のワンダーランド」

 何ともあいまいなコンセプトばかりで、地代収入の安定的な確保に向けた具体策は何一つ語られていない。

 にもかかわらずこの資料には「『賢い支出』により持続可能な市場を確保」「豊洲・築地合算のキャッシュフロー収支が黒字化し、当初の巨額な総事業費を超える都民負担の拡大を防止」と書かれている。金額的な根拠はなんら示されていないのに、である。これでは美辞麗句を並べただけの“作文”だ。

 ちなみに小池氏は、当時の記者会見で「築地を再開発して新たな東京の一大拠点を作るという希望。これがあれば私は必ずやってけると考えている」と述べている。このころから「希望」という言葉を自らの主張に潜り込ませていたのだった。

 そのうえで、7月に投開票された都議選では、自身が率いる地域政党「都民ファーストの会」で圧倒的な議席を得た。豊洲移転推進派、反対派の両者にいい顔を見せるための「捕らぬ狸の皮算用」を用いて都議会自民党の議席を奪い、政治基盤を強固にしたのだった。

 さて、いまや政界再編の台風の目として派手な打ち上げ花火を打ち上げる小池氏だが、都知事として決定した政策はすでに、これだけの危うさに満ちたものだった。来たる衆院選への小池氏の戦略や公約などは依然として不透明だが、有権者は「希望」の二文字以外にも、目を凝らして検証すべき点が多くある。