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「キンドル・ファイア」はiPad を超える?
低価格タブレットに込めたアマゾンの不気味な狙い

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第167回】 2011年10月19日
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 日本でアマゾン・ドットコムと言えば、書店も含めた単なるオンライン・ショップという印象が強いだろう。だが、アメリカでは、インターネット時代のウォルマートとでも言うような、ちょっと不気味で巨大な小売り勢力としての姿を明らかにしている。

 そんなアマゾンの姿を刻印したのは、先頃発表されたアマゾン製のタブレット、「キンドル・ファイア」のせいだろう。

 「キンドル」はアマゾンが自社開発した電子書籍リーダーで、2007年から発売されていた。オンライン・ショップがハードウェアを開発、販売すること自体が奇妙と言えば奇妙だ。だが、元来オンライン書店としてスタートしたアマゾンは、書籍販売に特別の思い入れとマーケット・リーダーとしての優位性があった。キンドルはプリント版書籍を販売するアマゾンが取り込んだ客を、電子書籍にスムーズに移行させるためのツールとなったのである。

 当初のキンドルは使い勝手こそ最高ではなかったが、新しいもの好きに大いに歓迎され、3代目のキンドルが発売される頃には、クリスマスのプレゼントとして一般にも人気のアイテムとされるようになっていた。町中のカフェ、飛行機の中、どこでもキンドルを手にして読書をする人々の風景が当たり前に見られるようにもなったのである。

 そこへ、キンドル・ファイアの発表だ。2010年春にアップルがiPadを発売して以来、モノクロの電子インク製のスクリーンしか持たず、コンピューターとしての性能の高さもないキンドルは、iPadに惨敗すると見られていた。あるアナリストは、電子書籍販売で90%に近い市場シェアを持っていたアマゾンは、iPadを初めとしたさまざまなタブレット・コンピューターの登場によって、数年後にはそれを35%にまで下げると見ていたほどだ。

 だが、勘違いしてはいけない。キンドル・ファイアはiPadの対抗機以上のツールなのだ。

 それは、わかりやすくたとえればこういうことだ。各家庭に電話機が配られる。ところがその電話機は、受話器を持ち上げてもひとつの番号にしかつながらない……。キンドル・ファイアも、実はアマゾンで買い物をし、アマゾンが提供するデジタル・コンテンツを消費するための入り口なのである。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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