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田中均の「世界を見る眼」

ボストンで考える世界の構造変化への戦略的対応
中国との信頼醸成に必要な「高質化政策」という概念

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第2回】 2011年10月19日
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 ハーバード大学のあるボストン近郊ケンブリッジのホテルで、このコラムを書いている。

 今回は、ハーバード大学アジアセンターの招聘計画で当地に一週間滞在し、エズラ・ボーゲルやジョセフ・ナイ、マイケル・サンデルなど、色々な教授や研究員と意見交換を行なうほか、このコラムがアップされる19日に「変化するグローバル・システムの中での米国、中国、日本」と題した講演を行なう。

 私は、テキストを読み上げるのはとても苦手なので、演説原稿を準備することはしないが、たぶん講演で話すことと、ここで述べることとは大きな違いはないように思う。

 先日、クリントン米国務長官も外交関係雑誌に、変化する世界と米国にとってのアジア太平洋の重要性について寄稿しているが、世界の構造変化にどう対応していくのかは知的社会でも最大の関心事である。

 私は、連載第1回で世界の構造変化の特徴を述べたが、今回のコラムにおいてはそれへの戦略的対応についての考え方を述べることとしたい。

中国を筆頭とする新興国の台頭に
グローバルな戦略的対応は必要ないか

 東西対立に対する戦略的対応は、ジョージ・ケナンがモスクワから国務省に宛てた長文の電報に盛られた「封じ込め政策」(Containment Policy)を基礎とした。

 米ソの核兵器の均衡を基礎としつつも、西側は結束しソ連の行動をチェックするとともに、世銀・IMF・ガット、あるいはOECDといった国際機関での経済面でのルール作り、G7を中心とする政治経済的協調を進め、冷戦に勝利し、今日の繁栄を築いた。

 近年の世界の構造変化は、中国を筆頭とした新興国の台頭によってもたらされているが、新興国の台頭もこのような西側システムに依拠している。

 とりわけ冷戦終了後、人、物、資本、技術が国境を越えて動き回るグローバリゼーションは、新興国の急速な経済成長を可能とした。同時に、中国などの開かれたマーケットの拡大から西側は裨益し、とりわけリーマン・ショックによる主要国での需要の落ち込みを中国が内需の拡大によりカバーしたわけであり、相互依存の拡大は西側を資することは間違いがない。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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