9.11、欧州危機、そして大震災
西側先進国が衰退を続けた10年
単一通貨ユーロの創設を定め、欧州連合を発足させたマーストリヒト条約から20年。成功したかに見えた通貨統合は、ギリシャを始めとする財政危機により大きく揺らいでいる。
米国同時多発テロから10年。ニューヨークの世界貿易センタービルにテロリストのハイジャックしたボーイング機が突っ込んだ様は、いまだ戦慄とともに瞼に浮かぶ。
一方で、その10年は中国がWTOに加盟して以降、飛躍的に成長を続けた10年でもある。そして、日本での東日本大震災から6ヵ月。一見無関係に見えるこれらの出来事は、実は世界の構造変化の象徴である。
米、欧、日という西側先進民主主義国の国力の衰えと、中国を始めとする新興国の国力増大、その結果として「多極化」と言われる世界の出現。これは何を意味するのだろう。これから世界はどうなっていくのだろうか?
多極的な世界は求心力を欠く世界である。求心力を欠く世界は、物事が決まらず不安定な世界となるかもしれない。思えば「東西冷戦」は、ソ連の脅威に対し結束した西側の勝利で終わり、その後の米国の一極体制と言われた時代も圧倒的な軍事力の下で米国の求心力は強かった。
しかし9.11は世界を変えた。9.11から始まる米国の戦争は、アフガニスタンでは「テロとの戦い」という正当性があったが、イラクでは「大量破壊兵器の拡散防止」の大義はなく、西側の分裂だけでなく米国の道義力に著しい傷を与えた。
そして何よりも、この10年の米国の戦費は膨大な財政赤字をもたらし、今日の経済停滞の原因となった。
従来は「聖域」と見なされてきた国防予算も、もはや削減を免れることはできない。そして、オバマ政権のリビア内戦への対応に明確に示されたとおり、米国が直接的な軍事行動をとるのは、極めて限られた場合となっていくのだろう。