では、売上高が伸びたにもかかわらず、売上原価が増加しなかったのはなぜだろうか?

 第1の理由は、売上高の増加が円安によって生じたことだ。これは、製造業の輸出産業において顕著に働いた。

 原材料の一部には輸入品が含まれており、円安は輸入物価の上昇を通じて原材料を引き上げる。しかし、輸入原材料は全体の一部でしかないので、売上高ほどには増加しないのだ。

 さらに、14年秋からは、原油価格の下落により、原価の増加が抑えられた。

 円安期に売上高も原価も増加するのは、04年からの円安期にも見られたことだ。今回は、原油価格下落の影響があったため、売上高の増加率に比べて原価の増加率が抑えられた。

産業構造を変えられないなら
法人税引き上げが必要

 企業利益が増加した第2の要因は、原価の中に人件費が含まれており、これは円安の影響を受けないことである。

 実は、従業員給与は、「増えない」というだけでなく、圧縮された。これが、輸出産業以外の分野で利益を増大させた大きな要因だ。

 図表6に示すように、日本の企業の従業員給与は、長期的に減少傾向にある。

 そして、アベノミクスは、この過程に影響を与えることができなかった。これが、図表2で見た名目賃金下落や図表1で見た消費支出減少の背後にある。

「利益が増えたから賃金を上げよ」と要求しても無理だ。それは、経済合理性に反する要請であり、それに従えば、企業は倒産してしまう。

 経済全体の賃金を引き上げるには、生産性の高い産業が登場するしか方法はない。

 現在の産業構造が変えられないなら、法人税の負担を引き上げることが必要だ。

 法人税の二重課税になってしまう内部留保課税ではなく、法人税率そのものを引き上げるべきだ。