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吉田恒のデータが語る為替の法則

なぜ、ドル/円では「有事の米ドル買い」の
逆流が起こらないと言えるのか?

吉田 恒
【第160回】 2011年10月26日
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 注目されたEU(欧州連合)のサミットは期待はずれで、「不合格」の結果にとどまったようです。それにもかかわらず、リスク回避は再燃していません。

 それならば、リスク回避がいったん限界に達したことが最終確認され、修正圧力、リスク資産の上昇、安全資産の下落が加速する可能性もあるのではないでしょうか?

 また、そのようなリスク選好局面での安全資産や円の上昇は不自然であり、円安・米ドル高へ反転する可能性もあるのではないでしょうか?

EUサミットが「不合格」でも、リスク回避になっていない

 欧州債務問題の対策については、「資料1」のように、2つの点が特に注目されています。1つ目はEFSF(欧州金融安定ファシリティー)の拡充で、2つ目は銀行の自己資本増強です。

 この2点について、マーケットが「合格ライン」としているのは、前者は2兆ユーロ、後者は2000億ユーロのようです。

資料1

 

 ただ、報道によると、10月23日(日)に行われたEUサミットでは、前者は1兆ユーロ、後者は1000億ユーロで調整されていたもようです。前述の「合格ライン」に対して半分程度ということは、本来は「不合格」とされても仕方のないところでしょう。

 もし、マーケットがEUサミットに「失望」した結果としてリスク回避が再燃し、ユーロが売られ、株は下落し、金利は低下となっていれば「普通」の反応でしょう。

 しかし、「不合格」なのにもしもリスク回避が再燃しなかったら、それはどう理解したらよいのでしょうか?

 合格、不合格といった評価とは別に、すでにリスク回避が行き過ぎたものになっている可能性を再確認することになるのではないでしょうか?

「行き過ぎたリスク回避」の逆流で、その反動は拡大へ

 リスク回避の目安の1つは金利の低下です。そこで「資料2」を見ると、米国の長期金利(10年債の金利)の90日移動平均線からのカイ離率は一時マイナス35%程度まで拡大しており、経験的に、異常な下がり過ぎの可能性を示していました。

 別の言い方をすれば、「行き過ぎたリスク回避」になっていた可能性があるわけです。

資料2

 

 今回よりも「行き過ぎたリスク回避」となり、金利が異常なほど下がり過ぎとなっていたのは2008年12月でした。

 そのような異常な動きの修正に伴う金利上昇と、今回、9月下旬からの米国金利の上昇は、これまでのところ、じつは「資料3」のように似ていました。

 この似た動きがこの先も続くならば、今はまさに「リスク回避の行き過ぎ」という認識が一般化され、行き過ぎの反動による金利上昇が加速するタイミングを迎えていることになります。

資料3

 

 欧州の債務対策が「不合格」なのに、リスク回避相場がこのまま再燃しないなら、さすがにリスク回避は行き過ぎで、その反動が広がっているといった認識が一般化し、リスク回避の逆流相場が一段と加速するのは想像できるところでしょう。

EUサミットの前から「不合格」となることは常識化していた

 そもそも、「合格」「不合格」と言いながらも、「合格」がかなり至難の業であることは、先週の段階で「常識」のようになっていたのではないでしょうか?

 EFSFを2兆ユーロに拡充するためにはECB(欧州中央銀行)の関与が必要であり、それはECBとドイツが強硬に反対していました。

 仮に、ECB抜きで2兆ユーロを達成するためにはドイツやフランスの支援拡大が必要であり、そうなると、今度はドイツやフランスの信用リスクが拡大し、国債格下げの可能性が高まります。

 欧州の債務対策への関心が高まり、洪水のように報道が流れていく中で、このことは欧州の専門家でなくても、一般の市場関係者の間で「常識」にすらなっていたのではないでしょうか?

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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