新型iPhoneの発売後、KDDI(au)とソフトバンクがつばぜり合いを続けている。それに危機感を持ったNTTドコモが新型機種の料金プランを値下げすると発表した。最も売れるiPhoneが最も安いという状況がスマートフォンの価格競争を泥沼化させそうだ。
「ソフトバンクの新型iPhoneのほうが通信速度が出る」
10月末、東京・新宿の家電量販店のiPhone4S展示コーナーには、KDDIとソフトバンクの性能比較表がぶら下げられていた。
速度から機能まですべての項目でKDDIに不利な表。だが、その下ではKDDIのスタッフが客をつかまえては両社の端末を実際に動かし、「ね、実際はau版のほうが速いんですよ。この看板はソフトバンクが作ったものですから」と訴えていた。目と鼻の先で接客するソフトバンクのスタッフがムッとするほど露骨な対応だ。
これはまだかわいいほう。発売当初はauショップの看板で、なぜかソフトバンクのキャラクターである白い犬が「au同士なら通話料がタダ」と宣伝していた。「au版ただとも始めました」と明らかにソフトバンクのプランをもじった看板も見つかり、KDDIも「是正した」と火消しに走るほど、激しいつばぜり合いを演じている。
この争いの号砲が鳴ったのは、iPhone4Sが発売された10月14日であった。KDDIは事実上、契約を独占してきたソフトバンクの牙城を切り崩そうと価格戦略を仕掛けてきたのだ。
まず、データ通信の定額料金プランを月額4980円にした。ソフトバンクよりも570円高いが、「つながりやすさ」という通信の品質でカバーした。
また、au同士なら午前1時から午後9時まで月額980円で通話無料のプランも用意。月々の利用料を割り引くことで一部の端末代金を実質タダに。ソフトバンクの料金策をまねしてまで、「つながる」ことを売りにiPhone利用者を奪おうとしたのだ。
しかし、ソフトバンクも負けてはいなかった。
旧機種の3Gや3GSからの機種変更を実質無料にし、契約の未払い分も負担。支払いずみの客にも6000円をキャッシュバックするという大盤振る舞いだ。さらにタブレット型端末iPad2までゼロ円から用意するなど、強烈な顧客の囲い込み策を展開した。
27日には早くも孫正義社長が「100万件規模の解約の嵐が来ると覚悟したが、杞憂だった。予約数は予測を大きく上回った」と“勝利宣言”を出すほどだ。