中国の紙幣はなぜ汚いのか、その意外な理由とは

猛烈な勢いでキャッシュレス化が進む中国。中国では見慣れた汚くてヨレヨレの紙幣を見る機会はめっきり減り、財布を使う必要も少なくなってきた。(ジャーナリスト 中島 恵)

スマホ決済が進み
キャッシュレス化が進む中国

 スマホ決済、シェア自転車、滴滴出行(タクシーの配車サービス)……。中国に住む中国人にとっては、スマホ1台さえあればこの上なく便利でも、出張や旅行で中国を訪れる日本人にとっては、中国でスマホ決済ができないため、逆に不便になってしまう。

 そんな現象が起きている。

 私は新刊『なぜ中国人は財布を持たないのか』の取材のため、今年、中国各地でキャッシュレス事情を取材して歩いたが、その過程で、逆に中国の紙幣をしげしげと眺めたり、紙幣(現金)について考えさせられる機会が増えた。

 中国人の口々から「現金は不便、スマホ決済のほうが便利」という声を耳にするたびに「なんで?」と素朴な疑問を感じたが、考えてみれば、中国の紙幣には常にニセ札問題がつきまとい、手垢だらけで汚いなど「現金を使いたくない事情」も背景にあった。

 なぜそんなに中国の紙幣は汚いのか?

 私はこの問題についても著書に記したが、これまでほとんど考えてみたことがなかった。長年中国に通い続ける私にとって、それは普通のことだったからだ。

 そう書くと異論反論が出てくるかもしれない。