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岸博幸のクリエイティブ国富論

TPPと大阪W選挙の共通点

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第163回】 2011年11月10日
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 すったもんだの混乱の末、ようやく今日、野田首相がTPP交渉参加の方針を発表するようですが、よく考えたらTPPを巡る混乱と今月27日の大阪W選挙には大きな共通点があります。この2つの問題の帰趨がどうなるかが日本の将来を占う試金石となるのではないでしょうか。

TPPの本質的なメリット

 TPPについて、賛成派が主張する主なメリットは基本的に市場の拡大でした。人口減少で国内市場は縮小するのだから、アジア太平洋に市場を拡大してアジアの成長を取り込むべきという趣旨です。

 もちろんこれも大事な点ですが、私は、TPPにはそれ以上に重要なメリットがあると思っています。それは、過去5年にわたって停滞している国内の改革を再度進めるためのドライバーとしての役割です。

 小泉政権以降、格差が喧伝されてあらゆる改革が停滞する中で、生産性は向上せず、日本の様々な部門に非効率が温存されたままです。その一方で民主党政権は予算のバラマキを続けていますので、政策的には需要面のテコ入ればかりで供給面の改革が進まないという、90年代と同じ状況になっています。

 農業について言えば、この15年で農業産出額は11兆円から8兆円に、生産農業所得は5兆円から3兆円に縮小しています。貿易自由化以前の問題として既にずっと衰退を続けています。

 その原因は農政の失敗、農業改革の欠如に他なりません。農協や小規模農家ばかりに配慮した結果、農地の大規模化も進まず、高関税による価格維持から農家の所得補償への政策転換も遅れたのです。もちろん、野菜など品目によっては低い関税率の下でも競争力を高めていますが、コメと農協に関しては明らかに改革が遅れ、非効率が温存されているのです。

 医療についても同様です。高齢化が進む中で社会保障負担は膨張の一途を辿っていますが、巨額の財政赤字を考えると医療の改革と効率化が不可欠です。

 そう考えると、TPPに反対する急先鋒である農協や医師会は、日本の農業が滅びる、国民皆保険が崩壊すると騒ぎ立てますが、その本音は、非効率な体制の下で享受している既得権益の維持が目的と考えざるを得ません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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