ベトナム 2017年11月15日

都市部でも救急車は来ない。地方で事故にあうと大変ベトナムの緊急医療事情【その2】

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日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安さんによる、ベトナムの緊急医療事情レポートの第2回です。

●関連項目:ベトナムの緊急医療事情【その1】

 以前、ホーチミン日本商工会(JBAH)が会員向けに配信しているメールマガジンの取材で、ホーチミンシティの医療関係者にベトナムの緊急医療体制について話を伺う機会があった。
 
 ベトナムの緊急医療事情を考えるうえで貴重な情報が含まれているので、商工会および取材先の了解を得たうえで、その内容の一部を以下に紹介する。

救急車はアテにできない

 私が最初に確認したかったのは、「ベトナムには日本のような救急車があるのか」である。これに関しては、私が周囲のベトナム人から聞いていたとおりで、「115番に電話をすると、救急車が来てくれることになっています。しかし残念ながら、機能しているとは言えない状況」だそうだ。ベトナム人の間ですら115番の存在を知らない人が多いという。

 またその運用にも日越では大きな違いがあった。まず日本では救急車は無料だがベトナムでは有料で2500円程度から。ただし外国人の場合は1万5千円程度からになる。金額は距離によって異なり、支払いは現地通貨のベトナムドンのみだ。日本の救急車だと救命救命士という資格を持つ人間が同乗していて、車内で応急処置を受けることが可能だが、この点も異なる。

 ベトナムでは医療行為のできる人は、原則的に同乗していない。ホーチミン市内では、同乗している救急車もあるらしいが、わずか数台にすぎないという。つまり病院まで搬送してくれるだけで、機能としてはタクシーと変わらない。

 街中では救急車をちょくちょく見かける。これは日本のように行政が運用しているものではなく、各医療機関が所有・運営しているものだ。救急車の車体には病院名やロゴが表示されているので、どこの病院のものかはすぐに分かる。
 
 万が一のときに備え、自宅の近所で救急車を持っている病院を探し、そこの電話番号を控えておくのは、緊急時の備えの1つになるだろう。ただし、これでも安心はできない。個々の病院が備えている救急車は数が十分ではなく、「電話をしても来ない、もしくは来るのに時間がかかるという場合がほとんど」だという。

 救急車がタクシー代わりに使われてしまっている場合もある。私がホーチミンシティの大型病院の1つ・チョーライ病院を訪れたときのことだ。ちょうど救急車が入り口に横付けされた。「緊急事態だ」と身構えた私は、すぐに肩透かしをくらった。後部のドアが開き、そこからは5~6人のご老人が、談笑しながらゆっくり降りてきたのである。

 「多人数で使う場合、割り勘にすればタクシーよりも安上がりになるから」と救急車を呼ぶ人がいると聞いていたが、どうやらその一例だったらしい。救急車の運転手の中には、これで小遣い稼ぎをする不心得者もいるという。

 こういう話を聞くと、私の周囲のベトナム人が救急車をアテにせず、「事故や急病などの緊急時にはタクシーを呼んで、最寄りの病院に運んでもらう」というのもうなずける。

 さらにもう1つ大きな問題がある。ハノイやホーチミンシティといった大都市では、交通渋滞が慢性化している。渋滞に巻き込まれると、救急車がいくらサイレンを鳴らしても、身動きがとれない。少し車が流れるようになっても、緊急車両の通行を優先するという交通ルールが徹底していないから、救急車に道を空ける車両は少ない。渋滞につかまると身動きできないのは、タクシーでも同様だ。

いろんな病院の救急車。車体のデザインが病院によって異なる【撮影/中安昭人】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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