起業や事業創造を語るうえで欠かせないのがファイナンス。必要なのはわかっているけど、分厚い入門書を手にとるのは気が引ける……、そう思っている人は多いのではないでしょうか。今回と次回の2回にわたって、創業期のファイナンスに必要なエッセンスを凝縮してお伝えします。

創業したてのベンチャーに<br />10億円もの値段がつくカラクリ図1 事業創造フレームワーク
第6回、第7回では、「準備期のファイナンス」について解説します。
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ファイナンスを知らないと
知らぬ間に会社を乗っ取られる……?

 事業コンセプト(第2回第3回)と利益方程式(第4回第5回)を作ったら、そのビジネスを進めるために資金を確保しなくてはならない。少しずつ稼ぎながら手元資金で事業を大きくすることもできるが、肝入りの事業に専念したいならどこからか資金を調達する必要がある。

 その調達方法は2つだ。1つの方法は誰かから借りること、もう1つは株式を譲渡する代わりに人から投資してもらうことである。適切な形でファイナンス(資金調達)を行うことで、事業拡大を大幅に加速させることが可能になる。

 しかし、これから事業を興そうという人は、事業分野には詳しくとも株式やファイナンスに関する知識はほとんどないことも多い。そのため、創業者のあいだの持ち株比率や、投資家との契約書をめぐったトラブルをよく耳にする。起業家と話すと、「資金は欲しいが経営権は奪われたくない」というジレンマを抱えている人が非常に多いことに気づかされる。

 ファイナンスにも確実な定石があり、勘どころさえ抑えれば恐れることはない。重要なポイントはいくつかあるが、選択肢は数個しかなく、ゼロから独創的に考えなければならない種類の問題ではない。これから、ファイナンスにあたってどのような点に注意すればよいのかの概要を解説する。