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 本書『パパは脳研究者』は、『海馬』などのベストセラーでおなじみの脳研究者・池谷裕二さんが、愛娘の4歳までの成長を脳科学の観点から、観察・分析した本だ。育児ノウハウをまとめた実用書ではない。8歳と4歳の2児の父である私が読んで、手放しで面白かった。「うちの子はもう小学生だから、幼児教育の本を読んでも遅い」などと躊躇せず、ぜひ、多くの方に読んでほしい。

『パパは脳研究者』
池谷裕二、クレヨンハウス、308ページ、1600円(税別)

 本書を紹介する前に触れたい本がある。1960年に発売された松田道雄さんの『私は赤ちゃん』だ。社会現象をおこした大ベストセラーであり、50年以上版を重ねている超ロングセラーである。「私はおととい生まれたばかりである。まだ目はみえない。けれども音はよく聞こえる。」という書き出しで始まる、赤ちゃん視点で書かれた、珍しい育児書である。

 タイトルも似ているが、『パパは脳研究者』の視座の新しさは、この大ベストセラー『私は赤ちゃん』に比することができる。パパが、わが子の変化を脳研究者の視点で分析する試みは、とても新鮮だ。そこには、発見と感動が満ちている。そしてそれは、育児の重苦しさから読者を解き放つ力をもっている。

『私は赤ちゃん』も当時、そのような読まれ方をしていた、と聞いたことがある。粉乳や公害などが発生する社会情勢の中、育児の解を求めたパパたちはわが子を標準的な指標にあてはめて安心を得ようとした。しかし、それはどこまでいっても落ち着かない泥沼だった。人間なんて千差万別。子どもの成長も、人それぞれ個人差がある。

 いま「パパたち」と書いたのは、朝日新聞で連載され岩波新書から刊行された『私は赤ちゃん』は、育児書でありながら、男性によく読まれた本だったからである。その点も、本書と共通する。ビジネス誌で「脳科学による育児」特集が組まれると男性がこぞって買うように、本書はそのテーマから、今後、多くのビジネスマンに読まれてゆくに違いない。