それによれば、撹乱(変化)の度合いが少ないほど棲息できる生き物の種類は少なく、変化が激しくなると増えていきます。しかし変化が一定の閾値を越えると、変化の大きさに適応できなくなって、また生き物の種類は減っていくのです(図)。

 弱者はまたパイオニア(開拓者)でもあります。環境がきびしく変化が予測不能なほど、ライバルが少ないからです。

 その名もパイオニアプランツという植物は、土が固く水や栄養分の足りない環境でも成長できます。パイオニアプランツが根を張ることで土は細かくなり、通気性や保水性が改善されます。また枯死した茎や葉は分解されて肥料になり、多くの昆虫や小生物が棲みついてだんだんとゆたかに土地になっていくのです。

 しかし皮肉なことに、これによってちからのある植物が侵入してきて、競争に弱いパイオニアプランツは追い出されてしまいます。やがて緑に覆われ、生き物たちの楽園になった環境には、パイオニアプランツたちの暮らすニッチはありません。自然界では、誰も既得権を保護してくれないのです。

 こうしてパイオニアプランツは、新たな未開の地(パイオニア)を求め、風に乗せてタネを飛ばすのです。

 しかしこのことは、「変化の激しい環境ほど弱者にはチャンスがある」ということを示しています。

 ビジネスの世界なら、無一文の若者たちが自分の才能だけを頼りにITビジネスに挑戦するのがその典型でしょう。鈍重な大企業はテクノロジーの急速な進歩に適応できないので、その間隙を縫って利益をあげる機会を見つけるのです。

(作家・橘玲)