現状は寒気がするほど心許ない
一川防衛大臣、失言の帰結

 一川防衛大臣が、一連の失言を理由に苦境に立っている。問題のあらましを振り返ると、まず大臣就任直後に「私は安全保障の素人だ」と述べて、防衛相としての資質が疑われた。

 また、国賓のブータン国王夫妻の宮中晩餐(ばんさん)会を欠席して、同僚議員の政治資金パーティーに出たことも問題になった。

 さらに、今般の「犯す前に、これから犯すと言いますか」という沖縄防衛局長の暴言に関連して、米軍普天間飛行場の移設の原点である米兵の少女暴行事件を「詳細には知らない」と述べたことが決定的だった。加えて、記者会見では、少女暴行事件を「ランコウ事件」と言った。

 一言で言うと「お粗末」であり、この方は大臣でなくても、組織の責任者はとうてい務まるまいと思う。こんな人材が大臣として組織の責任者になる日本の現実は、真面目に考えると寒気がするほど心許ない。

 それはそれとして、この問題はどう帰結するのか。当然現時点ではわかっていないのだが、あえて予想すると、野党が多数を占める参議院で一川大臣に対する問責決議案が出て、可決され、一川大臣が辞任しない限り審議がストップする状況となって、野田総理が庇おうとするものの、一川大臣が国政の停滞を避けることを理由に自発的に辞任するというくらいが、落とし所ではないだろうか(そうではないかも知れないが)。

 現実問題として、沖縄の住民感情を考え、また防衛大臣の人材としての一川氏の価値(存在自体がむしろマイナスだろう)を考えると、一川氏が防衛大臣を辞任することについては、何ら惜しいとは思わないし、一国民としてその「結果」は歓迎したいと思う。

 理想的には、任命権者である野田総理大臣が、自分の人事の不明を詫びて、より適任の人材へと防衛大臣を速やかにすげ替えたら済むことだ。早くそうすればいいのだが、察するに、野党にほどほどの政治的得点を与えるタイミングを計っているのだろう。