安全保障の「インテリジェンス」をビジネスでも使うべき理由上田篤盛氏 Photo:DOL

防衛省で長く政策決定のためのインテリジェンスを担当してきた元情報分析官・上田篤盛氏に、「インテリジェンス」とはなにか、その情報の集め方はどうやって身につけるのか聞いた。(聞き手/プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)

インテリジェンスは
解釈や目的によって内容が変わる

秋山 上田さんは防衛省での情報分析官としてご活躍でしたが、特別な任務にある人でなくとも、情報への接し方、ビジネスへの活かし方について、上田さんの情報に対するリテラシーや作法の片鱗を知ることは非常に意味のあることだと思います。今日はそれをじっくり伺いたいと思います。まず、インテリジェンスとインフォメーションの違いとは何でしょうか。

上田 インフォメーションは一般の人々が日々接することのできるニュースやデータです。一方的に不特定多数に対して発せられる生情報です。かたやインテリジェンスは生情報のインフォメーションを、ある目的に沿って処理、加工し、解釈して得られる知識です。だから、解釈する人や目的によって内容が変わってきます。

 例えば、「北朝鮮からミサイルが飛来する」という情報があったとして、ミサイルの射程内の県知事なら、県内にミサイルが落ちる可能性、県上空を通過するときに県内にどのような影響があるか、県民を避難させるのにJアラートがミサイルによって不具合を被らないかなどについて知りたいでしょう。

 国土交通大臣なら、航空機や艦船の交通にどのような影響が出るかが知りたいでしょう。首相は、その国がどのような意図でミサイルを撃っているのかが知りたいはずです。首相はアメリカ・韓国と協力し、日本の安全保障を強化するため、北朝鮮の指導者の意図、米大統領の意図などを探り、戦争に移行する蓋然性が高まっているのかなどを総合的に判断しなければならないからです。

秋山 立場も目的も違う三者では、同じニュースを前にしても、その後にほしい情報が異なるということですね。

上田 はい。そして、オーダーした人の、そのときどきの目的に合った情報を提供するのが情報分析官の役目です。