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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第11回】 2011年12月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

情報公開が進んだことの功罪。
もう少し素朴に信頼し合える社会を築けないものか

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情報公開が進んだことの功罪

 情報公開はいまや社会のあらゆる方面に広まりました。企業では投資家へのディスクロージャーが進みましたし、内部告発もしやすい環境が整いました。行政でもオンブズマン制度によって、市民に情報が公開されるようになりました。

 情報公開の流れは、インターネットなど情報を伝えるメディアの発達とも相まって、以前では考えられなかったことまで、わたしたちは知ることができるようになりました。

 このことの恩恵は計り知れません。人は監視機能が働くことで、倫理的行動をとる確率が高まります。情報公開によって、だれもが安心して過ごせるフェアな社会が築かれることが期待できます。

 一方で、その行き過ぎも心配されます。

 オンブズマン制度などでは、公務員がかえって委縮して行動してしまうことで、市民にとって結果的にメリットにならないこともあるような気がしてなりません。

 萎縮してしまうことで、人は無難な選択をするようになります。これが人の健康や安全につながる問題であれば、それが相応しいですが、すべて無難に、杓子定規に行政を実行されても問題にならなくても、本当の意味での市民のメリットにならないことも多いのではないでしょうか。

 また、自分の払った税金の使途が100%公開されたとしましょう。それを見たすべての人が納得できるような税金の使われ方というものがあるでしょうか。

 前回お話しした大阪府の例で言うと、漫画に関心のない人は自分の税金が児童文学館に使われていることに納得できないでしょう。お笑いに興味のない人は、ワッハ上方(大阪府上方演芸資料館)に税金が投入されていると聞いて、素直に認められないと思います。

 また、近年は生活保護の問題が議論されていますが、税金を払った人が「自分たちの問題ではないから」と否定してしまうと、あらゆることが成り立たなくなってしまいます。

 健康保険や介護保険も「自分が使ってもいないのに払うのはバカバカしい」と考えてしまっては、社会は「公助」という考え方がなくなってしまいます。

 今は支払った税金・保険料分の恩恵を享受していなくても、もし払えなくなっても社会的サービスを受けられる安心感のある社会を作っているという発想を持つことが大切なのではないでしょうか。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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