民間企業の意思決定機関は株主総会や取締役会などであるが、通常は、反対意見を含めて正確な議事録が作られる。なぜなら、議事録がなければ、問題が生じた場合等に、どうしてそのような経営判断を行ったのか、後で検証ができないからだ。

 ところが、国の行政政策を最終的に意思決定する内閣の閣議については、実はこれまで議事録が作られてこなかったというから、驚きである。取締役会や株主総会の議事録がなければ、恐らく上場はできない。日本国は企業であれば、まだ上場できないレベルにあるのだ。

直接の契機は
東日本大震災

 今年の1月、政府の東日本大震災に関わる15の会議のうち、10の会議で議事録の類が、一切、作成されていなかったことが明らかになり、大きな社会問題となった。これを受けて、公文書管理委員会が聞き取り調査を実施し、震災や原発事故等の歴史的緊急事態に関わる会議について、議事録の作成や保存を義務付ける再発防止策を決定したが、行政の最高意思決定機関である閣議の議事録は、1885年の初閣議から、実は一度も作られていなかったことが判明したのである。

 閣議の議事録がなければ、どうなるか。勢い、当時の閣僚の記憶に頼るしか方法はなくなり、声の大きい閣僚の一方的な言い分が「歴史」として定着しかねない。これでは、そもそも正確な歴史の検証ができなくなってしまう。

 事態を重くみた政府は、今年の7月6日、内閣総理大臣の決裁により、公文書管理担当大臣と内閣官房長官を共同座長とする「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」(以下「検討チーム」という)を発足させた。検討チームは、弁護士や大学教授等、情報公開に詳しい外部の有識者を含めて、検討を行った結果、今年の10月24日、新しい制度を提案した。その概要は、概ね次の通りである。