4月にスタートする薬価制度の抜本改革も逆風となり、製薬業界に寒風が吹きすさぶ。本誌の取材により、抜本改革と前後して、メガファーマの日本法人で大量のリストラが断行されることが分かった。国内製薬各社も近年、人員を絞っており、今後一段と整理が進む可能性が高い。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)

「業界の将来見通しがさらに暗くなったタイミングで、早速の大量カットだな」

 製薬会社の営業担当であるMR(医薬情報担当者)たちは現場である医療機関で顔を合わせると、そんな話題で持ち切りだ。メガファーマ(巨大製薬会社)である米メルクの日本法人、MSDで大量の早期退職者が出ると2017年末に判明すると、あっという間に業界内にうわさが広まった。

製薬業界の花形職種に冬到来、大手で希望退職に400人殺到大量の早期退職者が出るMSD Photo by Masataka Tsuchimoto

 MSDは16年売上高で米ファイザー、スイス・ロシュ、スイス・ノバルティスに続く世界4位のメガファーマ。日本でも売上高トップ10に入る。17年初めには、小野薬品工業の画期的ながん免疫治療剤「オプジーボ」と同様に、免疫チェックポイントを阻害する仕組みを持つ「キイトルーダ」を発売して注目を集めた。

 同じ会社が年末にも注目を集めた発端は、昨年10月中旬に行われた早期退職募集にある。

 MSDは「組織に関することで一切公表しない」とするが、同社関係者によると、会社が大義名分に掲げたのは生産性の向上。国内の同業他社と比べても、グローバルのメルクと比べても、「1人当たりの稼ぎが少ない」ことが理由であると会社側は説明した。要は「人員がだぶついている」のだ。

 全従業員約4000人に対し、募集人数は約250人。部門はMRを含む営業、管理など幅広く、17年末時点で勤続2年以上かつ30歳以上が対象だ。50歳以上には最大12カ月分の「特別追加金」が上乗せされたことから、主なターゲットは50代であったことがうかがえる。