ネットでの“海賊行為”規制法案が米下院に
コンテンツ企業側vsユーザー側で侃々諤々
昨年来アメリカのネット、コンテンツ業界ではSOPA(オンライン海賊行為防止法)を巡る混乱が続いている。
SOPAはその名の通り、著作権者の許諾なく映画や音楽といったコンテンツをネットで流通させる、いわゆる海賊行為を阻止することを目的とした法案だ。昨年10月26日に共和党のラマー・スミス議員など超党派の議員グループによって下院に提出された。2008年には上院で同様の法案、PROTECT IPも提出されている。SOPAは、違反者に対し最大5年の懲役を科せる他、検索サイトやプロバイダに対し問題サイトへの接続やサービスの停止を裁判所が命ずることができる内容になっているのが特徴だ。
この法案は米国商工会議所や米国映画協会(MPAA)、米国レコード協会(RIAA)、全米映画監督協会などの団体、さらにはABC、CBS、ランダムハウス、タイムワーナーなど多数の企業が支援を表明している。そのほとんどがコンテンツ企業だ。米国商工会議所によればハリウッドのコンテンツ産業は海賊行為によって1年に1350億ドルもの損害を受けているとされており、同法案に賛同するのも当然だといえるだろう。
法案はスミス議員を議長とする下院司法委員会で審議され、当初1回の公聴会で通過させようとしたのだが、これに対し一般のネットユーザーやネット関連企業、団体が一斉に反対の声を上げることになったのである。
反対派が特に問題視しているのは問題サイトへの接続やサービスの停止について。これまでなら1998年に制定されたデジタルミレニアム著作権法により、違法なコンテンツがアップロードされたとしても、そのウェブサイトなどを管理運営する企業は、要請に従って問題のコンテンツを削除すれば良かった。
しかしSOPAではプロバイダーの場合、問題サイトに接続できないようにサーバを書き換えたり、検索エンジンではフィルタリングにより検索結果に問題サイトが表示されないようにすることなどを命じられる可能性がある。これが事実上の、しかもかなり強力な検閲行為になると主張しているのである。グーグルの共同設立者でCEOのセルゲイ・ブリン氏は、SOPAの検閲は中国やイランが行っているものと同等とコメントしている。