平成27年度の国・地方を通じた財政支出は合計168兆3415億円で、その内訳を見ると国が70兆6583億円、地方が97兆6833億円となる(※注1)。生活保護のように政府が法で定めたものを、地方自治体が義務的に支出しているような背景も存在する。このように地方自治体が国以上に大きな額の税金を扱っている事実は、世の中であまり認識されていない。
平成27年度末における、地方自治体の借金(普通会計が負担すべき借入金残高)は約200兆円(※注1)にのぼる。高齢過疎化によって、今後も社会保障費が増大する一方で、税収は減少していく。
水道や交通機関など、自治体のサービスは日々の生活に直結している。財政の悪化が続くと増税やサービスの値上げ、サービス品質の低下を覚悟しなければならない。こうした背景から自治体財政への関心は重要だ。
メディアで地方自治体の情報を目にする場合、記憶に残りやすいのが不祥事だ。2017年も少なからず自治体の不祥事は発生しており、行政全体の価値を毀損するような事件は後を絶たない。一方、例年になく盛り上がった小池百合子氏を中心とした都知事選挙や築地豊洲の市場問題というような例もある。東京都は年間約11兆円の歳出があり、約17万人の正職員を擁するメガ自治体だ。そのお金の使い道の全体像について、住民はおろかメディアすらも説得力ある検証・評価を行っているとは言いがたい。
センセーショナルでわかりやすいテーマであればメディアも挙って取材合戦を行う一方、地方自治体の活動の基本である財政は相対的に注目度が低い。その理由を、関係する3者『自治体』、『住民』、『メディア』から改めて考えてみたい。
(※注1:地方財政の状況[総務省 平成29年3月公開版]より)