ムーミンの炎上入試問題が不適切どころか「良問」である理由今年の大学入試センター試験の地理Bで『ムーミン』に関する問題が出題され、物議を醸している。しかしこの問題、よく見るとなかなかの「良問」ではないか Photo:Newspix24/AFLO

「ムーミンの舞台はどこ?」
センター試験は本当に出題ミスか

 今年の大学入試センター試験の地理Bで『ムーミン』に関する問題が出題されたことが物議を醸している。

 試験問題は、アニメの『ニルスの不思議な旅』がスウェーデンを舞台にしたものであることを紹介した上で、同じ北欧三国に関係する『ムーミン』と『小さなバイキングビッケ』の画像を見せ、それぞれが「ノルウェーとフィンランドを舞台にしたアニメーション」であると紹介し、そのどちらが「フィンランドを舞台にしたアニメーションなのか」を考えさせる問題だった。

 騒動の論点はいくつかあり、「そもそもこんな知識が大学に入るのに必要なのか」というのが、世間の最初の反応だった。

 次いで「それにしても出題されたアニメが世代と合っていないのではないか」という議論が出た。そして、とどめとして「『ムーミン』の舞台は架空のムーミン谷であってフィンランドではないはずであり、正解がない間違えた出題だったのではないか」という指摘が広がった。

 先に私の見解を述べておくと、この問題を「出題ミスだ」という意見は論拠としてはとても面白いが、それを振りかざして問題の取り下げを主張するのは、ちょっと野暮だと思っている。

 まず、「舞台がフィンランドではないのでは?」という疑問についてだ。確かにムーミン谷は架空の場所なのだが、あくまでフィンランドの伝承に基づいた架空の場所であり、ムーミンの物語の中にはフィンランド湾も登場している。

 これが逆に外国で起きた話だったとしたら、理解いただけるはずだ。仮にアメリカの試験で『桃太郎』の鬼ヶ島や、宮崎アニメの『千と千尋の神隠し』について「どこの国を舞台にしているのか」を問う問題が出題され、選択肢が「日本か韓国」だったことが問題になったと想定してみたらどうだろう。間違えて「韓国」と答えた受験生が、「試験無効」を訴える気持ちはわからなくはないが、問題が無効とは言い切れないだろう。

 同じ視点に立てば、「ムーミン谷はフィンランドではない」という意見は正確かもしれないものの、それをあまりにもゴリ押しするのは、逆にフィンランドに対しても失礼だと思うが、どうだろう。