HOME

メタボリック

肝臓

腰痛・肩こり

高血圧・高脂欠症

うつ・ストレス

ニオイ

薄毛

老化防止

禁煙

男の病気

経口薬もIoT化、センサー内蔵で「いつ飲んだか」を管理

井手ゆきえ [医学ライター]
【第375回】
(写真はイメージです)

 昨年秋、米国食品医薬品局(FDA)が服用センサー内蔵の経口薬を承認した。日本でも発売されている統合失調症の治療薬「アリピプラゾール(製品名:エビリファイ)」に0.5ミリ四方のセンサーを組み込んだもの。

 患者が飲んだセンサー内蔵薬が胃で溶けると、胃液にセンサーが反応してシグナルを発する。そのシグナルを患者の二の腕に貼った「パッチ」が検出し、服薬の日時を記録。同時に患者の活動量の記録をとり、専用アプリケーションに送信する仕組みだ。気分や睡眠状況などのヘルスケアデータもスマホ等で入力できる。また、センサーは消化吸収されることなく、ふん便中に排泄される。

 統合失調症をはじめ精神疾患の患者は、病識の有無や体調次第できちんと薬を飲めないことが多い。服薬状況の変動は症状を悪化させるため、口を酸っぱくして「薬を飲みなさい」と繰り返す家族や介護者の負担は相当のものだ。

 米国では服薬遵守率の悪化による入院負担などで、年間1000億ドルの医療費が余分に費やされているとの試算もあるという。

 今回承認された「デジタルメディシン」は、服薬状況とその前後の状態を、いわば“見える化”する機能を備えている。本人の病識と治療に参加する意欲を促進する効果がありそうだ。また、本人の同意があれば専用アプリとインターネットを介し、医師や家族と情報を共有することも可能だ。治療効果を客観的に確認することで、薬の変更や減薬にも役立つ。

 FDAのプレスリリースには「薬を実際に飲んだかを追跡できるのは一部の患者に有益」とのコメントが載った。患者によっては「監視されている」と感じ、治療や医師に不信感を募らせる可能性があるから「一部」なのだろう。

 精神疾患のみならず、慢性疾患の治療薬はきちんと飲まなければ意味がない。しかし、降圧剤や糖尿病治療薬の一粒一粒に服用センサーが内蔵されている未来は、少々煩わしい。

 この新しい技術を「医師・介護者の利便性」ではなく「患者本人の最善」のためにどう使うのか。慎重な議論が必要だ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

関連記事
このページの上へ

井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 


カラダご医見番

ハードワークのストレスに加え、飲酒や脂っこい食事。ビジネスマンの生活習慣は健康面からは実にハイリスクです。痛い・苦しい・痩せた・太った・イライラする…。そんな症状はどのような病気の兆候なのか?どんな治療が有効なのか?いきいきと働き続けるために、身体と病気に関する正確な知識が欠かせません。

「カラダご医見番」

⇒バックナンバー一覧