正しく使えば病気やケガの回復を助けてくれる薬も、決められた用量を守らなかったり、飲み合わせが悪かったりすると、なかなか効果が現れなかったり、思わぬ事故につながったりすることがある。

 医療の担い手の中心は医師であるのは間違いない。だが、医師はあくまでも医学の専門家であり、薬学の専門家ではない。複数の薬を併用したときの相互作用や安全情報を網羅しているわけでなないし、他の医療機関から患者が処方された薬を個別の医師がすべて把握するのは難しい。実際問題として、複数の医療機関から処方された薬の飲み合わせが悪く、健康被害を起こす事例も報告されている。

処方と調剤を分担する
医薬分業は7割まで進んだ

 患者を健康被害から守り、また薬を効果的に使うためには、医師が処方した薬の相互作用や副作用は、化学物質である薬の効果・作用に精通している薬剤師がチェックする必要がある。

 そのために進められてきたのが、いわゆる「医薬分業」だ。治療を受けた病院や診療所で薬をもらうのではなく、「薬の処方をするのは医師、実際に調剤するのは薬剤師」と役割分担して、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して患者の健康を守る態勢が取られるようになってきている。

 国の後押しもあり、1997年に26%だった医薬分業率は、2016年度は71.7%まで増加している。そのため、今は医療用の医薬品を使うときは、病院や診療所で診察・治療を受けたうえで処方せんを書いてもらい、その処方せんを持って薬局に行き、薬を調剤してもらうという流れが一般的になっている。

「症状が安定しているので、薬だけほしい」という場合も、この手順を踏まなければならない。近年、電話やインターネット、SNSなどを通じて診療を行う遠隔診療も認められるようになったが、健康保険で医療用の医薬品を使う場合は医師の処方が必要だ。

 薬をもらうためだけでも、医師の診療を受ければ、医療の基本料金である初・再診料のほか、検査や処置にかかった費用も支払わなければならない。薬局では、薬剤費のほかに、薬剤師の技術料もかかる。健康保険を使えば、かかった費用の一部を支払うだけで必要な医療を受けられるものの、場合によっては市販薬を購入したほうが医療費が安くなるケースもある。