ルンバやドローン、そしてpepper、再発売されたaibo。これらはすべてロボットです。AIの発達とともに、現在、注目されているロボティクス。工業分野だけでなく、サービスや介護、エンターテインメント、そして家庭でも、AIを搭載したロボットが登場しており、これらを使いこなし、そして新しいビジネスに結び付けることが期待されています。今回は、ロボティクスの専門家である著者が、わかりやすく書いた新刊『ロボット――それは人類の敵か、味方か』の中から、エッセンスを抜粋して紹介します。

ロボットの定義がきちんと決まったのは
2016年だった

 人工知能(AI、Artificial Intelligence)という言葉は、この数年、急速に知られるようになり、私たちにとって身近な存在となりました。メディアを賑わせることも多く、2017年には、Google DeepMind社の「アルファ碁」が、世界最強の棋士に3連勝で勝利しました。日本においても、第2期電王戦で、将棋ソフト「ポナンザ」が名人を破ったことが話題となりました。

このようなニュースに、「人間はもう、太刀打ちできないのではないか?」という漠然とした不安をもった方も多いようです。

 そして、その影響でしょうか、「ロボットに仕事が取られる」というような話題も紙面を賑わすことが増えています。ロボットといえばヒューマノイド型(ヒト型)のロボットを想像されると思いますが、それだけがロボットではありません。

さらに近年ではAIとロボットが混在し、同じ文脈で語られることも多いのですが、ロボットというのはハードウェアとソフトウェアが統合した機械です。

ロボットは、体にあたる「ハードウェア」の部分と、脳にあたる「ソフトウェア」の部分に大きく分かれ、全体をロボティクス(ロボット工学)という学問分野で扱っています。

 このソフトウェアの部分がAIです。この脳の部分が急速に進化したため、ロボティクス全体もひっぱられて進化のスピードを上げている、というのが現状です。

さらにロボットには、実は長い間正式な定義はありませんでした。つい最近、2016年になって、ようやく工業規格においてロボットの定義「JIS B8445:2016」が制定されました。

それによるとロボットとは、
「2軸以上がプログラム可能で、一定の自律性をもち、環境内を移動して所期のタスクを実行する作動メカニズム」
となります。

 この定義は実際かなり「ゆるい」ため、多くの自律性をもった機械をロボットと呼ぶことができます。

 みなさんがイメージするであろうヒューマノイド型のロボット「Pepper」はもちろん、掃除ロボットである「ルンバ」や、手軽な空中撮影を可能にした「ドローン」などもすべてロボットと定義できます。ちなみに、本書で取り上げるロボットもすべて、この定義を満たしています。