数年前から話題に上っている、外国籍人材の活用問題。国籍を問わず優秀な人材を集めることが課題とされ、厚生労働省からは2010年に「日本企業における高度外国人材の活用促進を図る」ため、「企業における高度外国人材活用促進事業」の報告書が公表されている。しかし、1月18日にマンパワーグループ(神奈川県横浜市)が発表した調査結果によれば、実際には外国籍人材の採用に消極的な企業の姿が浮かび上がった。
調査は、東京・名古屋・大阪に拠点のある1004社を対象に、2011年7月に実施。
日本で就職できた留学生は
わずか1.1万人
前述の厚生労働省の報告書では、「経済のグローバル化が進む中で、世界は高度人材獲得競争の最中にあり、日本企業も諸外国の高度人材から選ばれることが必要な時代になっている」のに対し、「例えば、留学生(13.3万人)のうち6割以上が卒業後日本で就職することを希望している一方、実際に就職できた者は2008年で1.1万人」に止まるなど、高いスキルを持った外国籍人材の活用への課題が指摘されている。
マンパワーグループの調査によれば、「人材不足を解消するために海外からの人材が最も必要となる職種は何ですか?」との設問に、最も多かったのは「特にない・必要ない」(433社)で、全体の43%にあたる。景気の低迷により求人を控える企業が少ないことを考慮に入れても、海外からの高度人材獲得に企業が注視していなことがわかる。
求められている職種として最も多かったのは、「ITエンジニア(SE・プログラマーなど)」(11%)。次いで、「機械エンジニア(機械オペレーター、整備士など)」(5%)と、理工系人材の不足が伺えた。
海外からの人材を採用する際の
最大のネックとは?
次いで、「海外からの人材は主にどの国から来ていますか?」との質問に、最も多くの企業が答えたのは「中国」。しかし、次いで多かったのが「現在は海外から来ていない」で、ここでも企業が外国籍人材採用に消極的なことがわかる。順に、「アメリカ合衆国」、「その他(おもに韓国・ベトナム)」、「インド」、「台湾」、「フィリピン」が続く。
では、何が外国籍人材の採用のネックとなっているのだろうか。厚労相の調査では、「能力の判定が難しい」(45.8%)、「採用しても受け入れることができる部署が限られる」(41.1%)、「言語・コミュニケーション上の障壁がある」(36.6%)、「ビザの延長など法制度上の製薬が多い」(25.1%)などが上がったが、今回の調査でも、「言葉の壁」(266社)、「異文化との同化」(156社)、「ビザや法的な必要事項の把握」(126社)が挙がった。
外国人との交流に壁を感じる日本人は少なくない。しかし、「国内で働く分には日本人との交流だけで問題ない」という意識は非常に“鎖国”的だ。少子化が進み、優秀な人材の一部は海外で働くことを志す。「基本的に日本人しか採用しない」ことが暗黙の了解となっている現状への危機感は、まだ薄いようにも感じられる。
(プレスラボ 小川たまか)