政府は1月21日より「社会保障と税の一体改革」の理解を得るための説明行脚を開 始した。初日には安住淳財務省ら財務三役による説明会が開催され、消費増税で社会保障財源をまかなう改革の趣旨を説明したと報じられている。

いいだ・やすゆき/駒澤大学経済学部准教授。エコノミスト。1975年東京生まれ。東大経済学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得中退。内閣府経済社会総合研究所、参議院第ニ特別調査室、財務省財務総合政策研究所等で客員を歴任。主な著書に『経済学思考の技術』(ダイヤモンド社)、『世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ』(エンターブレイン)などがある。
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足もとの増税は歳入不足を
埋めるためのものにすぎない

 社会保障のために必要な増税であるから納得いただきたいというのが、建前上の増税の根拠ということになろう。その一方で、全国行脚スタートの翌22日に 岡田克也副総理は筆者も出演したフジテレビの報道番組で、「年金の抜本改革を議論しないと(社会保障と税の)一体改革が議論できないということではない」 「(改革に)必要な財源は、今回の10%には入っていない。さらなる増税は当然必要になる」と言及している。

 両発言を併せると現政権の財政運営は、足もとの年金財政における歳入欠陥を埋めるために増税し、今後も財源不足が生じたら増税するという半永久的な「繰り返し増税」を基本としていることがわかる。各種世論調査では今次の増税提案について「やむを得ない」との意見が増えてきていると言われる。しかし、今次の増税提案を認めることは、「半永久的な増税の繰り返し」にお墨付きを与えているに等しいことに気づいたうえでの賛成とはとても思えない。