タケダ有力OBがなぜ日清食品幹部に?

本田信司氏

 大きなサプライズとなったのは、最大手である武田薬品工業に絡んだものだ。年明けにある大物OBの驚きの人事情報が業界内を駆け巡った。

 元社長有力候補だった本田信司取締役(当時)。昨年、武田薬品を辞めたがその転職先は、なんと畑違い。日清食品ホールディングス(HD)執行役員経営企画担当に1月1日付で就任(2月11日付で執行役員CSO〈グループ経営戦略責任者〉)した。

 役員人事ゆえ、日清食品HDは昨年末に発表していたが、リリースの前歴欄は空白。そのため「元タケダ」と気付く人は少なかった。

 本田氏といえば、武田薬品社長CEOのクリストフ・ウェバー氏が外部から招致されるまで、長谷川閑史・前社長の後継者と一時目された人物。ウェバー体制後も、取締役としてとどまっていたが昨年6月、長谷川氏が会長から相談役に退くタイミングで、最後の株主総会に姿を見せることなく会社を去っていた。

製薬最大手・武田薬品工業の元幹部を起用した日清食品ホールディングス
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 本田氏の退任後、外国人幹部が新たに取締役に起用されて外国人による経営体制が強化されており、「やはりウェバー社長と反りが合わなかったのではないか」(武田薬品OB)などと憶測が飛び交った。

 59歳なのでまだひと花咲かせる気では――。一部業界関係者は本田氏のセカンドキャリアを気にしていたが、その舞台が他業界。驚きの結果だった。

 製薬会社幹部がその経験を生かして同業他社、あるいはヘルスケア関連会社へ移るパターンは散見される。幹部級以外も転職する際は同業系への転籍が多い。そんな中で食品会社は珍しい。

 ある武田薬品関係者は「共に大阪創業という縁ぐらいしか思いつかない」と驚くとともに、「本田さんは同族経営が懐かしくなったのかも」と冗談交じりに話す。

 というのも、武田薬品は2代前の武田國男社長が03年に会長に退くまで、代々創業家筋がトップだった。一方の日清食品は安藤家が君臨する企業だ。

 日清食品HD傘下には現在、製薬はもちろん、ヘルスケア関連もほとんどない。本誌は本田氏起用の意図などを日清食品HDに尋ねたが、日清食品HDは「取材対応は遠慮させていただきます」とのこと。転籍の背景は今のところ謎である。

 運命の歯車次第では、製薬業界1、2位の企業トップ同士で逢いまみえたかもしれなかった2人。同じ時期に耳目を集めたのは運命のいたずらだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)