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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第16回】 2012年2月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

「4年以内に70パーセントの確率で起こる」
という問題をどう解釈するか

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0でもなく100でもない発表に不安が広がる

 あなたには、これから結婚しようとしているパートナーがいるとします。このパートナーが占い師に見てもらったところ、「4年以内に70パーセントの確率で浮気をする」と言われました。果たしてあなたは、このパートナーと結婚しようと思いますか?

 不謹慎な喩えになってしまいました。東京大学地震研究所は1月23日、首都圏でマグニチュード7クラスの直下型地震が4年以内に70パーセントの確率で発生する可能性があると公表しました。

 発表された数字をどのように受け取るかというのは難しい問題です。

 来月起こると言われれば、地震対策を万全に整えたり、別の地域に避難するという選択肢を考えるでしょう。その意味で「4年以内」というのは微妙な数字です。「明日起こるかも」と思いながら4年間も生活するのは、ストレスが多すぎます。

 確率が「70パーセント」というのも微妙です。降水確率が70パーセントと言われた場合、傘を持って行くかどうかは人によって判断が分かれるところです。

 地震規模の「マグニチュード7」という数字は、首都直下型だったらたいへんな災害になるかもしれません。ただ、東日本大震災のマグニチュード9という数字を聞いているだけに、これも受け取り方は人それぞれ異なるのではないでしょうか。

 東京大学地震研究所の発表を、危機が差し迫っていると受け取る人もいれば、地震が頻発する昨今では想定内と受け取る人もいるでしょう。

 「でも、30パーセントも起きない可能性があるなら、起こらないんじゃない?」
 「4年以内ということは、その間に自分は転勤して首都圏にはいないかもしれないし」
 「マグニチュード7だったら、どうにか耐えられるんじゃない?」

 そう楽観視する人がいても、何ら不思議ではありません。

 とはいえ、起こるとも、起こらないとも確信できない状態に、得体の知れない不安が澱のように残る、居心地の悪さが続いています。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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