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【カーペンターズ「イエスタデイ・ワンス・モア」】
素敵に乱れれば、素敵な美が出来上がる

小栗勘太郎 [音楽愛好家]
【第19回】 2012年2月9日
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 美は乱調にあり、って言いますよね。そうだと思いますか?

 「美は乱調にあり」といえば、瀬戸内晴美(現・寂聴)のベストセラー小説のタイトルでもあります。伊藤野枝という一人の女性が福島から上京。奔放に生き、雑誌「青鞜」の編集長になる。無政府主義者・大杉栄の内縁の妻となって、甘粕事件で大杉とともに獄中で亡くなる。大正デモクラシーの時代のそんな女性の生涯を綴っています。

 そのタイトルは、大杉栄の「生の拡充」という小論の中の文節に由来します。曰く「この反逆とこの破壊との中にのみ、今日至上の美を見る……諧調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。諧調は偽りである。」

 実は、英国の哲学者フランシス・ベーコンも、「随想集(1597年)」の中で、同趣旨を述べています。理想的な黄金率は美しすぎ近寄りがたく魅力がない。ちょっと乱れたり、歪んだり、傾いたりしているところにこそ、本当の美しさがある、と。

 この論法には、ひとつの疑問が湧きます。それは、どの程度乱れると美しいのか? ということです。 全く乱れが無ければ、それは大杉栄の「諧調」だし、フランシス・ベーコンの「黄金率」であって、それは、真の美ではないのでしょう。

 でも、だからと言って、乱れれば、乱れるほど、美しくなるのですか? と、問われれば、答は、どう考えても否ですね。

 だから、時には激しく、時には微妙に乱れ、その乱れが、心を掻き毟(むし)って、人は美しさを感じるのでしょう。絵でも写真でも文学でも書でも。どれだけ乱れるかは、その人なりの生き方や性格、個性、さらには、戦略的な計算が潜んだりするのでしょう。素敵に乱れれば、素敵な美が出来上がるということでしょうか。

 で、今週の音盤は、カーペンターズ。最大のヒット曲「イエスタデイ・ワンス・モア」を収録したアルバム「ナウ・アンド・ゼン」です(写真)。

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小栗勘太郎 [音楽愛好家]

1958年生まれ、牡羊座のB型。某国立大学卒、米国滞在5年。公僕を生業とする音楽愛好家。著書は『音楽ダイアリーsideA』 『同sideB』(西日本新聞社)。『毎日フォーラム』誌にて「歴史の中の音楽」を連載中。


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ビジネス・パーソンは日夜、現場で闘って、日々、喜怒哀楽を感じる。実は音楽の現場も同じだ。だって、音楽もビジネスも、所詮、生身の人間が作る、極めて人間くさい営みだから。音楽には妙な薀蓄など不要かもしれないが、音楽が生まれる時には物語がある。それを知って聴けば、喜びが倍になり、悲しみが半分になるかもしれない。毎週1枚、心のビタミンになるような音盤を綴ります。

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