先月25日、米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRB(連邦準備制度)は2%のインフレ目標を導入した。これについて、日銀の反応が面白い。国会議員などに、日銀がインフレ目標をとっていないのは、FRBもやっていないという安直な説明をしてきたので、インフレ目標を導入したくない日銀にとって、FRBの決定は不都合な事実だ。

 私はプリンストン大に留学し、バーナンキ・プリンストン大経済学部長(当時)からインフレ目標が優れた金融政策のフレームワークである(中央銀行の透明性を確保して、目標を示すことで市場との対話ができ、実績を上げて中央銀行の信頼性を確保できれば金融政策も有効になる)と教えてもらっていたので、彼が2002年にFRB理事になった時から、FRBはインフレ目標を採用すると言い続けてきた。リーマンショックなどがありバーナンキ議長も回り道をしたが、ついに日銀も年貢の収め時がやってきた。

日本銀行の強弁

 日銀は、FRBの不都合な事実について、国会議員などに「ご説明」の絨毯爆撃をしているようだ。その際「あれはインフレ目標ではない。バーナンキもそういっている」と説明している。実際に多くの国会議員からそうした話を聞いた。中には、レベルの低い日銀職員もいて、FRBは“GOAL”を決めたが、“TARGET”ではないとか、滅茶苦茶な説明をしている者もいたようだ。これは論外としても、前原誠司民主党政調会長などは、日銀の言うことを鵜呑みにして話をしている。

 バーナンキFRB議長の発言の出所は25日の記者会見だ。「インフレ目標か」と聞かれ、「すばらしい質問だ(Excellent Question)」といいながら、「もし、“インフレ目標”を物価を最優先して雇用などを二次的なものとするということを意味するのであれば、その答えはノーだ。というのは、FRBは二つの責務をもっているからだ(If by "inflation targeter" you mean a central bank that puts top priority on inflation and other goals like employment as subsidiary goals, the answer is no. We are a dual-mandate bank.)」と言った。