近年、癌医療において、オプジーボやキムリアなど免疫薬が飛躍的に進歩している。しかしその一方で、「免疫療法は胡散臭い」という話もよく聞き、患者はどの情報を信じたら良いか分からない状況だ。そこで日本医科大学武蔵小杉病院・腫瘍内科教授の勝俣範之医師に、免疫療法はどんなもので、何が問題なのかを聞いた。(清談社 岡田光雄)
年間3500万円、“夢の癌治療薬”が
保険適用で大幅値下げに…?
国立がん研究センターによれば、2013年の1年間に癌と診断された患者数は約86万2000人で、17年には101万4000人に達すると予想している。厚生労働省の発表でも、今や日本人の3割近くが癌で死亡しているという。
これまでの癌治療は、手術、放射線療法、化学療法が3本柱とされてきたが、近年、話題となっているのが4つ目の治療法である「免疫療法」。従来の抗癌剤治療のように癌細胞を直接攻撃するのではなく、人間の体に元々備わる免疫力(リンパ球)を強めて癌を倒すという治療法だ。
元・厚生労働省直営機関である国立がん研究センターが、科学的根拠(エビデンス)に基づいて「効果アリ」と認めている免疫療法はごくわずかではあるが、存在する。その一つが14年に“夢の癌治療薬”と鳴り物入りで登場した免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)だ。
癌細胞は天敵である免疫力にブレーキをかける働きがあるが、オプジーボはそのブレーキを解除し、リンパ球による癌細胞への攻撃を強める効果がある。現在までに皮膚癌、肺癌、腎細胞癌、胃癌(いずれも一部)など6種類の癌で保険適用が認められている(18年1月時点)。
保険適用(患者は3割負担)が認められた治療ということは、国のお墨付きを得られたも同然。逆に国の信用をまだ得られておらず、全額自己負担を求められる治療は、「先進医療」(技術料以外の診察料、検査料、投薬料、入院料などは保険適用可)や、「自由診療」に分類される。
オプジーボの発売当初の薬価は、1人当たり年間3500万円と高額だったが、その後は徐々に値下がりしている。現在は保険適用された治療が対象となる「高額療養費制度」を申請すれば、年間43~300万円程度で済む。
しかし、勝俣医師によれば、オプジーボなどは例外に近く、世に存在する免疫療法・免疫薬の多くはエビデンスが乏しいという。