長年、引きこもってきたある男性が「喉頭がん」のために亡くなった。父親は、個人が救われる仕組みの必要性を訴える。いったい、何があったのか(写真はイメージです)

病院に運ばれ2日後に死亡
長男はなぜ治療を拒み続けたか?

 長年、引きこもってきた長男が「喉頭がん」のために亡くなった。48歳だった。

 長男が「がん」の診断を受けたのは、昨年11月に亡くなる9ヵ月前のことだ。しかし、両親にも病名や余命のことを伝えようとせず、その後は一切の診療も治療も拒み続けた。

 食事はまったく喉を通らない状態が続き、水だけで痩せ細っていくなか、看護師が自宅に入院を勧めに来ても、頑として動かなかった。

 しかし、喘ぎ苦しむ声を聞いた次男が心配して救急車を呼んだ。隊員は説得したものの、中からカギをかけで出て来なかった。「中から声が聞こえなくなったら救急車を呼んで」というのが、本人の意思だった。

 ある日母親は、部屋のカギが開いていることに気づいた。本人は、ほとんど声が出ない状態だった。長男は病院に運ばれた2日後、亡くなった。
 
 そんな長男の最期の話を明かすのは、KHJ全国ひきこもり家族会連合会の「KHJ岡山きびの会」会長で、「NPO法人津山・きびの会」理事長の川島〓三さん(〓の字は火へんに亥)。

「救急車に乗せたとき、後ろ目で私の顔をじっと見るんです。“それでいいのか?”と。そのときが眼が生きていた最後でした」

 これまでも筆者は、同じように絶望の中で生きる意志を持てなくなっている引きこもり当事者たちに何人も会い、話を聞いてきた。今回は父親から見た息子像ではあるものの、川島さんの長男もまた、いずれの支援にも反応することなく引きこもり続けてきた。

「引きこもりというのは、欲望の肥大化を否定する積極的な行為ではないか」
 
 以前から川島さんは、感じるままをそう打ち明けていたものの、周囲はなかなか理解してくれなかったという。