生活保護法改正方針に隠された
恐るべき「ステルス兵器」
生活保護法(1950年制定、2013年改正)、生活困窮者自立支援法(2013年制定)の改正案の姿が、少しずつ明らかになってきた。これらの改正は2013年に予定されていたもので、この2月9日、同時に閣議決定された。生活困窮者自立支援法の改正案は、すでに衆議院・厚労省のサイトで公開されているが、生活保護法改正案は現在、厚労省方針が断片的に報道されているのみだ。
生活保護法改正案について、特に関心が集まっているのは、「生活保護の医療なら後発医薬品(ジェネリック医薬品)を原則に」「生活保護世帯の子どもが大学に進学すると進学準備一時金を支給(自宅通学10万円・自宅外30万円)」「就労指導強化」の3点だが、いずれも数多くの問題点や課題を含んでいる。
しかし本連載では今回、生活保護法改正案に隠された“地雷”を取り上げる。目立ちにくく問題にされにくいが、巨大な破壊力を含んでおり、射程は生活保護と無縁な人々にも及ぶ。あまりの強力さの前に、近隣某国のミサイルも裸足で逃げ出しそうだ。しかも最初の対象は、生活保護で暮らす、悪意と無縁な人々だ。
「最も弱く差別されやすい人々や動物の様子を見ていれば、その国やその社会がわかる」と語る人々は多い。社会学者の故・小室直樹氏は、社会を見るとき野良猫に注目していたという。
貧困地域の野良猫の栄養状態が良く、人間を見ると人懐っこく近寄ってくるのであれば、たとえ貧しくても良好なコミュニティが存在する。経済指標の数値が同程度でも、野良猫が痩せさらばえている地域もあれば、人間を見ると逃げていく地域もある。「食べつくされてしまったので、いない」という地域もある。野良猫には、人間のコミュニティのありようが反映されるのだ。
私は、「日本の生活保護制度は、日本の本当の姿を示す鏡であり、日本のすべての人々の近未来に関する最も確実な占い」と考えている。日本社会は、言い換えれば日本人である私たちは、私たちのうち最も傷つきやすい人々に何をしたいのだろうか。それは、日本社会と私たちに何をもたらすのだろうか。