東日本大震災の復興支援活動で、糸井重里氏も驚くほどの成果をあげている一人の学者がいる。西條剛央(37)。ボランティア経験なしの早大大学院(MBA)専任講師で、「ふんばろう東日本支援プロジェクト」代表だ。
Amazonの「ほしい物リスト」を援用し、2万4000個の物資を被災地へ届けたり、「重機免許取得プロジェクト」で計200人以上の免許取得者を出したりと、誰も思いつかないアイディアを実行。行政や日本赤十字社もできない支援の仕組みに注目が集まっている。
猪瀬直樹東京都副知事、柿沢未途衆議院議員から、GACKT氏、宮本亜門氏、市村正親氏、大竹しのぶ氏、木村佳乃氏、佐藤隆太氏、成宮寛貴氏、藤原紀香氏、別所哲也氏、松田美由紀氏、南果歩氏、森公美子氏、森山未來氏など、事務所の垣根を越え、有名人からも続々支援の手が差し伸べられているのはなぜか。『人を助けるすんごい仕組み』を発刊したばかりの著者に、第2回は「重機免許取得支援プロジェクト」と「家電プロジェクト」を紹介してもらう。

――西條さんは、いくつもプロジェクトを立ち上げているんですよね?

西條 はい、15以上はあると思います。物資の次に2011年5月に始動させたのが「重機免許取得プロジェクト」ですね。これは被災された方々に重機免許を無料で取得していただこうというプロジェクトです。

 重機免許は、数日間あれば数万円で取得できるんですよ。現地は瓦礫だらけで住居などすべてがつくり直しです。実際に、ハローワークなどでは重機免許を持っていることが条件になっていることも少なくないんです。また実務経験がない人にも就職可能な仕事もあります。

 たとえば、生活費として3万円を渡してもすぐになくなってしまいますが、3万円で重機免許を取得して、建設事業に携わることができれば、年収300万円くらい稼ぐことも可能になります。

――よく「魚より釣り竿」と言いますが、それは支援し甲斐がありますね。

西條 人は義援金や失業保険をもらうだけで、本当に生き甲斐を持って生きられるかというと、そうではないと思うんです。自分の手で一生懸命働いて、たまには大切な家族においしいものを食べさせてあげたい、子どもや孫に好きなものも買ってあげたい、望む進路に進学できるよう支えてあげたいというのは、どんな親も願うと思うんです。そしてそれが生き甲斐になり、喜びになる。

 こうした自立支援プロジェクトは、被災地の復興に直接貢献しながら、新たな生活のスタートを切るきっかけになると思います。また、受講料を僕らが補助して広く告知しますから、地元の教習センターの支援にもつながり、地域経済の活性化にもなるという何重もの意義があるプロジェクトなんです。

 下の動画は2011年12月に第2弾の「重機免許取得プロジェクト」を開催したとき、僕がキャタピラー東北でインタビューしてきたものです。これを見ていただければ、現地ではいまも大変な状況で必死に前を向こうとしているということがおわかりいただけると思います。