勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばししてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』だ。著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。本稿では、本書より一部を抜粋し、「モチベーションを高める目標の持ち方」を紹介する。

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自制心は大事な場面で発揮する

 人生において、我慢しなくちゃいけない場面は数多くあります。

 資格試験のために毎日机に向かう、痩せるためにカロリーが高いものを食べない、遊びの誘いを断って仕事を終わらせるなど。例を挙げたらきりがないほどです。

 したいことをしない、あるいは、したくないことをする時には、意志の力、すなわち自制心が必要になってきます。

 しかし、自制心を発揮させる源となる「こころのエネルギー」は無限ではないので、使いすぎるとガス欠状態になり、しばらくそれが使えなくなってしまいます。

目標は一度にひとつ、優先順位を大切に

 日常のちょっとした誘惑に対処するためには、その都度、意志の力が必要になります。

 職場や家庭でストレスにさらされたり、多くの意思決定が必要だったり、自分の印象をよくしようと思ったりすると、自制心に必要なエネルギーは少しずつ消耗されていきます。

 私たちは、日常生活のさまざまな局面で自制心を使っているのです。

 何でもかんでも自制心を発揮してしまうと、資源が枯渇した状態になり、自制心を本当に必要とする場面に遭遇しても、その力を発揮することができなくなります。

 もしかすると、あなたが誘惑にすぐに負けてしまうのは、あなたの自制心が弱いのではなくて、自制心を発揮し続ける場面が多くて、資源が枯渇している状態に陥っているからなのかもしれません。

 どんなに自制心の強い持ち主であっても、資源が枯渇していれば、誘惑に負けてしまうことになります。

無駄なく自制心を使うコツ

 1日目の講義でも伝えましたが、まずは、自制心を発揮するエネルギーは有限である、という事実を受け止めましょう。

 そのことを意識するかどうかで、普段の過ごし方が大きく異なってきます。

 ここぞという大事な場面で自制心を発揮することができるように、私たちはなるべく資源を有効に使う(無駄なものには資源を使わない)ことが重要になってきます。

 自制心が多く求められる目標を同時に2つ以上、追い求めようとすることもできるだけ避けたほうがよいです。

 何度も言いますが、自制心を発揮するのに必要な資源には限りがあります。一度に多くの負荷をかけると、問題が生じやすくなります。

 たとえば、禁煙をすると、基礎代謝が落ちて食欲が増加するため、体重が増加する傾向にあります。

 それを避けるために、禁煙と同時に減量しようとする人がいるのですが、結局どちらも失敗するというのはよくあります。

 1つに絞れば成功していたかもしれないのに、2つの目標に挑戦した結果、両方とも失敗することにつながってしまうのです。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ですね。

 目標に優先順位をつけ、一つひとつ確実にクリアしていくことが望まれます。

 また、どんな目標であっても、できるだけ簡単な方法を見つけるように努めましょう。

 わざわざ難しい方法を選んで、目標への道を「茨の道」にする必要はありません。資源のマネジメントに賢くなることを心がけましょう。

 では、ここで、あなたの日常を振り返ってみて、どのような時に自制心を発揮しているのか考えてみてください。

 何でもかんでも自制心を発揮していないか、資源の無駄遣いをしていないかを確認してみましょう。

※本稿は、『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。