「働き方」改革は、まず収益力を高めないと対応できない(写真はイメージです)

大企業の賃上げのしわ寄せは中小企業へ

 働き方改革の大きな柱は「同一労働同一賃金」と「長時間労働の是正」ですが、それに関連して政府は、今年は大企業に対して3%の賃上げを要請しています。つまり大企業は、従業員の残業時間を削減し、生産性を上げつつ、3%の賃上げを実施せよ、というわけです。

小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 しかしこのことは大企業にとどまらず、日本企業の99.7%、働いている人の70%を占める中小企業に、大きな影響を与えます。利益の確保も大きな命題である大企業で、賃上げなどが行われれば、そのコスト上昇のしわ寄せは下請けである中小企業におよび、収益を圧迫する可能性が高いのです。

 厚生労働省は、残業時間の上限規制の実施時期を、大企業では2019年4月、中小企業は1年遅らせて2020年4月にする方針ですが、中小企業では、大企業からの仕入れなどのコスト削減圧力もあって、猶予の1年間を逆手にとって、サービス残業で乗り切ろうと考える経営者も現れるでしょう。

 そのような経営姿勢では、中小企業は法律に振り回されて、最悪の事態を招く可能性があります。

 もちろん私は、社会問題化している残業代未払いや、過重労働を認めるわけではありません。働いた対価を支払わなかったり、健康を害したりするような働き方を強いることには、大企業であれ、中小企業であれ、絶対に許されることではありません。社会や会社は人を幸せにするために存在するからです。では経営者は、どうすればいいのでしょうか。