いったん書いてもらい、共有してから話を進めるというアプローチでは、ほぼ全員が何かを書いてくれます。集団心理が働くのでしょうか、ほかの人が書いていると、自分も書かなきゃという気持ちになるようです。それを書きっぱなしにせずに、他の付箋も見て同じか違うかという単純な基準で縦横に整理してもらうことで、ほかの人と話しあい理解が進みます。このように参加者が自分たちで付箋を貼り直すというのは重要な作業で、これによって脳が活性化し、活発な全員参加をうながせるというのが、この方法の1つ目の効用です。

 2つ目の効用は、いったん全体像が見えるので大局を見失わずにゴールに向かって議論を進めやすくなることです。縦横に並んだ付箋をよく見ると、間違って整理されていることがよくあります。議論に誤解はつきものですからある意味で当然です。細かい違いや分類にこだわると、大きな流れを見失います。細かな違いを気にするより、共通点を重視し、ゴールに向かって進むというのが、ファシリテーションをするときの私の流儀です。

 そして3つ目に、以上のように議論を進めると、参加したという満足感が高まります。納得感があり、コミットメントも高まるのです。

 声の大小と発言の重要性には、あまり相関性はありません。書いて共有してから話しあうというやり方は、声の大きな人を牽制し、声の小さい人、手を挙げて発言する勇気のない人の参加もうながすので、小さな、しかし重要な意見をうまく拾い上げ、実現に結びつける効果的な方法なのです。

(中編へ続く)