今月16日、2010年6月に大阪で起こった3歳と1歳の姉弟が放置され餓死した事件について、殺人罪に問われている母親への判決が下される。発生当時から連日大きく報じられたこの事件。母親への責任を追及する声の一方で、行政を始め周囲の大人の誰もが幼児の保護に介入できなかったことへの衝撃も大きかった。
先月報じられた警察庁のまとめによれば、2011年に摘発された児童虐待事件は前年比32件増の384件、被害児童は38人増の398人。これは統計を取り始めた1999年以降、過去最多だという。
虐待を行った加害者についてはもちろん罪に問われるべきである。ただ、虐待が繰り返されるのを防ぐためには、事件のあった家庭を特殊と決めつけるのではなく、育児中の家庭がどんな悩みを抱えているか、社会全体で共有することが必要だろう。そこで今回は、その一端を掴むべく、労働政策研究・研修機構が行った「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」を見てみたい。
調査期間は2011年10月~12月。末子が18歳未満のふたり親世帯2000世帯、ひとり親世帯2000世帯(いずれも核家族、祖父母など親族との同居世帯含む)に調査したもの。有効回収数はふたり親世帯1435件、ひとり親世帯784件。調査対象地域は全国の175地点。調査方法は訪問留置回収法。
5年前との比較
「生活にゆとりない」世帯が急増
まず、生活にゆとりを感じているのかについての調査。生活ぶりについて「大変苦しい」「やや苦しい」と答えた世帯の割合は、「ふたり親世帯」で45.0%、「父子世帯」で48.8%、「母子世帯」で69.9%だった。5年前の調査ではそれぞれ27.9%、32.1%、52.9%で、いずれも生活が苦しいと感じている割合が増えていることがわかる。
また、「過去の1年間、お金が足りなくて、家族が必要とする食料または衣料を買えないこと」の有無については、「ふたり親世帯」の7.5%、「父子世帯」の9.5%、「母子世帯」の15.3%が「よく」または「ときどき」食料を買えず、同9.7%、9.6%、21.2%が同じく衣料を買えなかったと答えた。
母子世帯は相対的貧困層の比率でも54.8%(等価税込み所得ベース)と突出して高い(父子世帯は5.6%、ふたり親世帯は10.5%)が、ふたり親世帯や父子世帯でも、生活にゆとりを感じていない層は一定数存在する。