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「引きこもり」するオトナたち

ワーキングプアは本当に“負け組”?
貨幣価値だけでは測れない幸福の姿

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第16回】

 ゴーッと低く響き渡る音とともに、時折、建物のすぐ上をジャンボ機が通過していく。

 かつて成田空港反対同盟の拠点があり、激しい闘争の舞台として、その名を轟かせた千葉県芝山町。そんな町の廃校を利用して開設された日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)の「労協若者自立塾」は、鳩山政権の行政刷新会議による「事業仕分け」の結果、廃止された「若者自立塾事業」の1つだ。

事業仕分けで姿を変え始めた
引きこもり支援「若者自立塾」

 ワーカーズコープの職員として、芝山町の支援の現場で関わって来た、小澤真さん(31歳)も、元「引きこもり」の当事者だった。

 「事業仕分けについては、ムダを省くことや、議論を巻き起こすという意味では、いいきっかけをくれたのかなと評価しています」

 今は、仕分け対象のスタッフの1人として、そう肯定的に受け止める。

 全国に30校あった若者自立塾のその後は様々だ。同塾の場合、5月1日をもって、塾生の最後の卒塾式が行われ、6月からは、厚労省の「緊急人材育成・就職支援基金」を活用した合宿型の“基金訓練”として、新たな事業をスタートさせる。

 同塾の特色だった“演劇プログラム”は、今後も基本的に取り組んでいく予定だ。ただ、今までよりも、手に職を付けるための訓練的要素に重点が置かれるという。また、期間も3か月コースだったのが、プログラムを拡充する方向で、コースは最長1年まで延期。訓練受講対象者には、月10万円余りの生活給付金が支給される。

 「元々、若者自立塾の運営自体、厳しい状況の中で、皆さんやられてきた。事業仕分けを機に、もう難しいと撤退されたり、自費で国の制度に捉われずに続けたり、我々のように“基金訓練”で改めてスタートしようとしたり、その後の選択は分かれました。自立塾によって、いろいろな特色があったし、目指す若者像も違っていた。元々、いろいろな可能性があったので、かえって多様性が生まれてきたのかな、と思っているんです」

 国の施策に翻弄される支援の現場で、そんな変遷を見てきた小澤さんは最近、「低所得であることと貧困とは、必ずしもイコールではない」と感じている。

 「どんなに貧乏でも、幸せな人がいると思っている。協同労働とは、1人1人孤立させないようにつながっていく働き方で、お互いの生活を支えあう。所得水準で言うと、ワーキングプアなんですが、働いているスタッフは、意外と幸せだという人が少なくありません」

 入塾生には、収入が高くても、それまでの会社に使われるような働き方に耐えられず、会社を辞めた人たちもいる。人間の幸福感は、単純に所得だけでは測れない。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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