急成長の陰で進行していた業務のひずみと限界

ビルや道路の工事現場で、倉庫や工場で、農園やテーマパークで──。冷却ファンが付いた作業服で働く人を目にする機会が増えた。夏の標準装備となりつつある「ファン付きウェア」の市場で約6割のシェアを占める「AIRCRAFT(エアークラフト)」の生みの親が、広島県福山市に本社を構えるワークウェアメーカー、バートルだ。

創業は1958年。機能性とファッション性が融合した独自のブランド戦略で存在感を示し、社員115人で350億円近い年商をたたき出す少数精鋭の成長企業だ。

「温暖化による熱中症対策や人手を確保するための道具として、ワークウェアに求められる役割も変化しています。この市場にはまだまだ拡大の余地がある。将来的には1000億円を見据えています」

そう語るのは、バートル代表取締役社長の大崎諭一氏だ。

2025年には物流拠点を刷新し、「CAMP BURTLE(キャンプバートル)」と名付けられた新センターが稼働した。延べ床面積は、旧倉庫を5倍近く拡張した約3万平方メートル。この物流センターから日々数万点の商品が全国へ出荷されていく。その流れを支えるのが、業務システムの開発・販売を手掛けるアイルの基幹システム「アラジンオフィス」のライフスタイル・ファッション業向けパッケージと、Web受発注システム「アラジンEC」だ。

100億円の売り上げ増! 急成長企業が「壁」を突破するために選んだシステム構築のパートナーとは2025年に稼働したバートルの新たな物流拠点「キャンプバートル」。物流センターとは思えないスタイリッシュな建物だ

「システム強化は、バートルにとって10年来の大きな課題でした」

物流センターの立ち上げとシステム刷新を主導した同社プロジェクトマネジャーの浅井一寿氏はそう語る。

かつて使っていたシステムは、売り上げが30億円台の頃に導入したものだ。20年に100億円を突破した時点で、すでに処理能力が限界に近づいていた。浅井氏がアイルにコンタクトを取ったのは21年3月。物流センターの建設場所が確定した直後のことだった。

「Web受注を効率化したい、というのが最初のご相談でした」とアイルのシステムソリューション営業の矢島健太郎氏と酒井勇弥氏は振り返る。

しかし、すぐにバートル特有の受発注フローの複雑さが明らかになる。

「即納」と「計画出荷」をいかに両立させるか

バートルは「ワークウェア製造販売」と「アパレルブランド」という、二つの異なるビジネスモデルを併せ持つ会社だ。主に販売代理店を顧客とするワークウェア販売では、Webやファクスで受けた注文を当日中に出荷するスピードと、潤沢な在庫力が武器になる。

一方、アパレルブランドとしては、主に作業服専門店やホームセンターに、売り場のシーズン戦略を左右する主力商材を提案するのが同社の役割だ。年2回の展示会でシーズン前の先行受注をまとめて集め、生産計画と連動させながら段階的に納品していく。

即納と計画出荷。この二つのロジックを同時に成立させるだけでも複雑だが、さらに、「AIRCRAFT」のヒットで展示会での大口受注が急増。インターネット販売市場の拡大に伴い出荷先も拡大し、多様な注文が一気に流れ込むようになっていた。

生産・入荷計画と顧客の要望を突き合わせながら、何を、いつ、どこへ、何回に分けて出荷するのか──。取引先ごとに出荷タイミングや取引条件が異なる中、出荷を巡る判断は複雑さを増していく。旧システムは即納型を前提としていたため、複雑化した計画出荷のロジックをシステム上で再現するのには限界がきていた。

「つじつまを合わせるために伝票を大量発行したり、修正や取り消しを繰り返したり。その意味が担当者にしか分からない状態でした」(浅井氏)

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システム刷新プロジェクトマネジャー
浅井一寿 

それでも現場はなんとか回っていた。だが、より深刻だったのが、顧客企業のバイヤーに正しい情報を示せないことだった。Web受注画面にアクセスするたびに在庫数が変動し、出荷履歴も安定しない。機会損失につながるのはもちろん、顧客からの問い合わせ対応にも追われるようになっていった。

「Web受注の効率化」という表向きの課題の裏に、商流の複雑さと属人化が絡み合った構造的な問題が横たわっていたのだ。単なるシステム刷新ではなく、事業の成長に耐え得る業務の在り方を確立することが急務だった。

100億円の増収実現、物流リードタイムも劇的に改善

「数え切れないほどのベンダーを検討しました」と言う浅井氏だが、アイルとの商談の手応えは、初回から他社と異なっていたという。

「アパレルのことを分かっているな、というのが第一印象です。二つの商流のコントロールに悩んでいることもすぐ理解してくれました」

背景にあったのが、アイルの持つ専門性だ。

アイルは、BtoB企業のビジネスをシステム面から支える独立系ベンダーである。主力の販売・在庫を管理する基幹システム「アラジンオフィス」は、導入実績が5000社を超える。強みは、業種ごとの商習慣を深く理解し、業務フローに合わせてカスタマイズできる点にある。

Web受発注システム「アラジンEC」にもアパレル向け機能が充実しており、標準装備の「展示会受注」機能では、取引先のバイヤー別にきめ細かく受注が集計できる。商談に臨んだアイルの矢島氏も酒井氏も、アパレル向けシステムを専門とするチームのメンバーだった。

「同様の悩みを抱えたアパレル企業さまのシステムを手掛けた経験を生かして、具体的にできること、できないことをお伝えできました」(酒井氏)

そんなアイルにとっても、バートルのカスタマイズの難易度は高かった。特に、展示会で受けた大口受注を、いつ、どの順番で出荷するか。その判断まで実装するには、かなり細かく業務をひもといた上で、在庫全体を管理する基幹システムと連携させる必要がある。そこでアイルが提案したのは、Web受発注システムだけでなく基幹システムを含めた刷新だった。

浅井氏は当初、基幹システムのリプレースまでは想定していなかった。しかし、サプライチェーン全体をひもとくと、システムを有機的に結合させることの重要性は明らかだった。そこで、アイルとの共創プランを社内に提案。大崎社長も「アイルは上場企業であり、アパレルに詳しい。何より浅井がそこまで信用しているなら」と、気持ちよく承認し、21年12月、プロジェクトが走りだした。

もっとも、特に初期には激しい意見の応酬もあったという。

「かなりバチバチにやり合いました(笑)。でも、だからこそ互いの理解が一気に深まったと思っています」(矢島氏)

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システムソリューション営業
矢島健太郎

要件定義やシステム設計を経て、物流センターの稼働タイミングに合わせて25年3月からシステムの利用がスタートした。

成果は、数字にはっきり表れている。システム稼働後の初の決算(25年11月期)で売り上げ348億円を記録。前期の245億円から100億円以上の増収、前期比42%増という大幅な成長を実現したのだ。これは単に「増えた受注をさばけた」という意味だけではない。「受注増に耐える」から「受注増を前提に回す」へ、仕組みそのものを転換できたことが重要なのだ。

変化は現場の1日の動きにも表れている。その日の注文をデータ化する部署では、かつては14時ごろにならないと昼の休憩に入れなかった。それが今では12時ちょうど。データ処理の完了が2時間短縮されたことで後工程も連動して早まり、リードタイム全体の短縮につながった。「注文翌日の到着」が安定して実現し、顧客からの問い合わせ数も大幅に減ったという。

業務を再設計し、「人が主役」を実現する

一連の取り組みの背景には、「人が主役」という一貫した思想がある。

「システムで業務を置き換えるのではなく、各部署の業務が何のためにあり、それを誰がどう担うのがベストなのかを常に考えていました。成長のための改革という軸を守りながら、業務に寄り過ぎず、経営目線を押し付け過ぎない。そのバランスを常に意識していました」(浅井氏)

そのために浅井氏は、自らを「情報のハブであり、翻訳者」と位置付け、現場、経営、ベンダー間で共通認識をつくり続けた。

「なぜそれが必要か、なぜ今までできなかったのか。相手に応じて言葉を変えながら、同じことを繰り返し伝えてきたように思います」(浅井氏)

成果は、現場の意識の変化にも表れている。今、現場主導で業務マニュアルの整備が進んでいるのだという。

100億円の売り上げ増! 急成長企業が「壁」を突破するために選んだシステム構築のパートナーとは「アラジンオフィス」「アラジンEC」の導入で業務が標準化・可視化され、現場の意識が大きく変化している

「属人化というブラックボックスが開いたことで、現場全体の業務理解が進み、ナレッジを共有しようという意識が広がっています。次なる成長に向けて、新たな人材を受け入れていく土壌が整いつつあります」(浅井氏)

酒井氏も、稼働後の物流センターを訪問したときにその変化を肌で感じたと話す。

「皆さんの質問が、驚くほど具体的で深い。主体的に使いこなそうとしている証拠です。システム導入というより、組織改革に携わらせていただいたことを実感しました」

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システムソリューション営業
酒井勇弥

改革は今も継続中だ。特に現在、同社が見据えているのは在庫精度のさらなる向上だという。

「出荷の最適化はかなり進んだので、次は入荷と棚卸しです。成長を続けていくためには、システムも進化し続ける必要があります」(浅井氏)

成長に懸ける強い思いは、アイルも共通するものだ。

「当社は社員の個性をすごく大事にする会社なんですが、同じようにお客さまの個性も大事にしています。われわれが目指すのは、システムに合わせてもらうのではなく、お客さまの個性に合わせて育つシステムを提案すること。だからこそ、成長ビジョンが明確なバートルさんには提案しがいがありました」(矢島氏)

「このプロジェクトを通じてわれわれも成長できたと感じています。第二、第三のバートルさんのような事例を生み出したいし、業界全体を盛り上げる役割を果たしたい」(酒井氏)

バートルとアイル、双方に成長をもたらしたこのプロジェクトの先に、大崎社長が描く次のステージがある。

土台づくりを終えて、さらなる成長フェーズへ

アパレルの中でも、企業ユニフォームはモデルチェンジや季節展開など継続的な提案で受注が積み上がる構造を持つビジネスだ。顧客の信頼を勝ち取れば、紹介によって新規顧客も増えていく。さらに、人材不足に悩む現場の魅力向上の手段として「かっこいいユニフォーム」の需要は高まっている。

「約2700億円といわれるワークウェア市場で、バートルのシェアはまだ2割未満。提案の余地はまだまだあるし、シェアも伸ばせると考えています。そのためにも、成長期に一気にアクセルを踏みたい。システムに投資するのもそのためです」と大崎社長の言葉は力強い。

100億円の売り上げ増! 急成長企業が「壁」を突破するために選んだシステム構築のパートナーとはバートル
大崎諭一 代表取締役 社長

しかし、どれだけ高性能なシステムでも、使いこなせなければ意味がない。

「社員一人一人が、どこまで工夫して使いこなしてくれるかに期待しています」

そして大崎社長が最後に強調したのが、メーカーとしての本質だ。

「メーカーの生命線は商品です。ユーザーに求められる、バートルらしい商品を生み出せてこそ、全ての投資が意味を持ちます」

ワークウェアにファッション性を持ち込み、「AIRCRAFT」で新市場を切り開く──。バートルは、常に「なりたい姿」を描きながら走り続けてきた企業だ。今回の改革も、その歩みに連なる重要なステップだったといえる。

「振り返ると、転機といえるタイミングにはいつも、共に成長してくれるパートナーに恵まれてきました。アイルさんも、次のステージへ向かうために欠かせないパートナーです」

●問い合わせ先
株式会社 アイル
〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー15~17・20階
TEL:0120-356-932
https://ill.co.jp/
アラジンオフィス:https://aladdin-office.com/
アラジンEC:https://aladdin-ec.jp/