成長する人は「経験」から学んでいる――。これまで1万2000人以上の「振り返り」をサポートしてきた行動変容の専門家・永谷研一氏が明かす、成長し続け、目標達成する人の共通点とは? 新刊『月イチ10分「できたこと」を振り返りなさい』から、そのポイントをピックアップして紹介していきます。今回は、「反省」の危うさについて解説していきます。
「反省」=「振り返り」は間違い
私が実施するセミナーの受講生の一人にKさんという女性がいました。彼女は念願だったフルマラソンに挑戦したそうです。しかし、30kmを過ぎたあたりで足の痙攣が始まり残念ながらリタイアとなりました。「あれだけ練習したのに、なぜ完走できなかったのか……」。なんとかその原因を探り、次回に向けて再出発したかったKさん。しかし、ひどく落ち込んでしまい結局、その意欲を失ってしまいました――。
なぜKさんは、やる気を失ってしまったのか。それは「反省」してしまったからです。皆さんは、「振り返り」と言うと、どんなことを思い浮かべますか?
・なぜうまくできなかったのか?
・なぜ自分はこんなにできないのか?
このように、うまくいかなかった出来事ばかり考えるかもしれません。とくに、「振り返り=問題を見つけて改善する」という意識が強いと、悪いことばかりに目が行きがちです。しかし、「振り返り=反省」ではありません。
反省とは、自分の失敗やダメな点に目を向け、それを改めようとすること。こうした失敗やできなかったことに無意識に目がいってしまうのが人間です。思いどおりにいかなかったこと、うまくできなかったこと、恥をかいたこと、注意されたことなど、私たちのまわりには、数えきれない失敗が生まれています。
しかし、「できなかったこと」ばかり見て悩んでいると、どんな気持ちになりますか?「あぁ、どうしよう……」「自分なんてどうせ……」「もう、やめてしまおう……」そんなふうに気持ちが落ちていきますよね。いったんこうなると、どんどんネガティブになり、前向きに行動できません。事実、脳科学の研究でも、人は悲観的な思考に引っ張られやすいとされています。一度受けた恐怖(痛い目にあった、恥をかいた、怒られた)は、長期にわたって人の思考に影響を及ぼし続けるのです。
成績が上がっているときはどんどん成長していくのに、成績が悪くなったとたん、ドツボにハマッていく。そんな経験をしたことがあるでしょう。うまくいっていないとき、人は自分のことをネガティブに見がちです。そのように自分を見続けるうちに、「自分には向いていないのかもしれない」「いっそのことやめてしまおう」という感情が芽生えてきます。そして、成長が止まってしまうのです。