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「医療」は本当に役に立つのか

 介護保険が4月から第7期を迎える。介護サービスとその報酬は3年ごとに見直される。その6回目の改定になる。財源難の中で確実な利用者増が見込まれる中、厚労省は新規サービスの拡充を諦め、制度の持続性を前面に打ち出すことになった。

 そこで掲げたスローガンが、「自立支援」による「重度化防止」と「適正化」である。切り札として介入してきたのが「医療」だ。「治す」ことが目的の医療が多くのサービスに入り込み、「回復」させるための錦の御旗として「自立支援」が謳われる。「回復」の波が広がれば、要介護度が軽減されて総費用は下がるはず。社会保障費の膨張に悩む財務省の覚えがめでたくなる、という筋書きだ。

 現実の介護の現場で介護者を悩ませている大きな課題の一つは認知症ケアである。認知症ケアについて、今回の制度改定でどのような変化が起きるのだろうか。点検してみた。

 まず、「認知症サポート医」の出番を位置付けた。認知症の人が受診している近くの「かかりつけ医」が、「認知症サポート医」の資格を持つ医師からの助言を得て、診察に当たると双方の診療所に新たに報酬が付く。

 かかりつけ医の診療所には、「認知症療養指導料」として3000円、サポート医の診療所には「認知症サポート指導料」として4500円である。

 認知症サポート医は、認知症についての特別な研修を受けた医師のこと。「認知症サポート医養成研修事業」として厚労省が2005年から始め、国立長寿医療センター(愛知県大府市)に事業委託し、都道府県・指定都市が実施主体となっている。

 15年度の末までに5068人が研修を修了し、20年度までに1万人を目標にしている。2011年からはフォローアップ研修も実施している。

 認知症がこれほど社会問題になったのは介護保険以降、それもこの10年ほどだろう。大学の医療教育の中でも、老年学やアルツハイマー病などがきちんと取り入れられたのはそう昔のことではない。「認知症なんて講義になかった」と話す高齢の医師は多い。そのため国は、新たに認知症研修に取り組まざるを得なかった。

 この新報酬は、今回の制度改定の目玉である「医療介護の連携」をよく表していると言えるだろう。ただ、サポート医はかかりつけ医に助言をするとしているが、実際に認知症の人に問診などをしないままでどれだけの助言ができるのだろうか。

 認知症の人の日々の暮らしぶりや家族などの周りの人との関係、既に利用している介護保険サービスの種類などさまざまな要素に直に触れないで、適切な助言ができるのか疑問である。