東京オリンピックの喧騒が去った2020年、あなたはどんな生活をしているだろうか?
AIによってシンギュラリティは起きるか? ヒト以上にやさしいAIは登場するか? ヒトとAIはどう共存していくのか?
構想・執筆に2年かけた注目の小説『マルチナ、永遠のAI。――AIと仮想通貨時代をどう生きるか』が出版され話題となっている。
ビットコイン、ブロックチェーン、ディープラーニング……正確な技術論と、その道の世界的権威の見解をもとに緻密に描いた作品で、SFではない、というから注目だ。
実物通貨と仮想通貨、日常と非日常、ヒトとAIの境界線がどんどんなくなりつつある今、私たちはどうやって生きていけばいいのか?
AIは苦手というあなたも、これさえ覚えておけば、周囲から尊敬の眼差しを浴びるかもしれない。
2000年代中盤から「AI」と「IoT」を研究し続けてきた大村あつし氏の特別寄稿をお送りする。
(構成・寺田庸二)

AIに知能はある?<br />数学者と哲学者の<br />論争の勝者は?

AIに興味がある人必読の
「チューリングテスト」と「中国語の部屋」

『マルチナ、永遠のAI。――AIと仮想通貨時代をどう生きるか』は、主人公の岩科正真(いわしなしょうま)が、幼なじみの五條堀裕樹(ごじょうぼりひろき)が開発したAIと対面するシーンから始まります。

 正真は、そのAI、マルチナのあまりに卓越した会話能力に驚き、
「とてもAIとは思えない。もはや人と区別がつかない」
 といった反応をします。
 その様子を見た五條堀は、正真にこう尋ねます。

「ショーマ的にはチューリングテストは合格か?」

 さて、このチューリングテストとは、イギリスの数学者アラン・チューリングによって提唱された、「ある機械が知的かどうか」を判定するテストのことです。