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3.11の「喪失」~語られなかった悲劇の教訓 吉田典史

大破する原発付近で苦渋の決断を下した救援隊
歪んだ批判を招いた「患者搬送拒否」報道の教訓

――戸丸典昭・前橋市消防局司令長のケース

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第6回】 2012年3月13日
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原発危険区域内の入院患者搬送を断る
批判にさらされた群馬県の緊急消防援助隊

前橋市消防局 消防司令長の戸丸典昭氏。

 震災から1年が過ぎた。1年前、多くの新聞やテレビは、被災地の出来事を集中豪雨のように報じた。それらの出来事の中には、報道で詳しく背景が伝えられなかったこともあり、読者の誤解を誘発させ、インターネット上で批判などが行なわれたケースもあった。今回はそんな出来事の1つを取り上げ、真相に迫りたい。

 私は、1年前の震災直後、気になった報道があった。それは、福島県に派遣されていた、群馬県の緊急消防援助隊を巡るものだった。

 3月11日の震災発生直後、総務省消防庁は、福島県にいた群馬県の緊急消防援助隊に、福島第1原発半径20~30キロ圏内付近の入院患者を搬送するよう打診した。そのとき、前橋市消防局司令長の戸丸典昭氏(55)を現場の責任者とする緊急消防援助隊は、この要請を断った。

 共同通信社は3月23日、その経緯を次のように報じた。カッコ内は筆者の注釈である。

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屋内退避区域の患者搬送拒否
群馬など3県の消防援助隊

 東日本大震災で、事故が起きた福島第1原発の半径20~30キロ圏内の屋内退避区域にいた入院患者について、総務省消防庁から搬送するよう要請を受けた現地の群馬、岐阜、静岡の計3県の緊急消防援助隊が「隊員の安全に不安が残る」として断っていたことが(3月)23日、分かった。

 総務省消防庁は「安全面に問題はないことは伝えた。しかし要請に法的強制力はなく、現場での判断にコメントはできない」としている。各地の消防当局によると、消防庁から(3月)16日、福島県の屋内退避区域での患者搬送依頼を受けた。しかし「詳しい状況が分からない上、特別な装備もなく出動に不安が残る」などとして断った。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


3.11の「喪失」~語られなかった悲劇の教訓 吉田典史

東日本大震災からもう1年が経とうとしている。人々の記憶も薄らぎ始めた。しかし、国の復興対策はなかなか進まず、被災者・遺族の心の傷も癒えない。3.11がもたらした「喪失」は、日本人にどんな教訓を投げかけているのか。日本が真の復興を遂げられる日は来るのか。その問いかけをまだ止めることはできない。いや、止めてはいけない。遺族、医師、消防団員、教師、看護士――。ジャーナリストとして震災の「生き証人」たちを取材し続けた筆者が、様々な立場から語られる悲劇の真相を改めて炙り出す。

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