東芝から厚生労働省、ひいては財務省に至るまで、不正、ねつ造、改ざんによる問題が後を絶たない。それらに共通しているのが、「忖度」の存在だ。もともとは、上司の意向を察するというポジティブな意味を持つが、私には、組織を崩壊させる恐るべき猛毒に思えてならない。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口 博)

忖度が起きた時点で
組織の長は失格だ

組織の長が「居心地が良い」と感じ始めたら、それは忖度が生じる予兆。ボスの顔色をうかがいながら仕事をするメンバーばかりの組織は成長できなくて当然だ

「忖度」が引き起こしたトンデモな事態が後を絶たない。東芝による不正会計、厚生労働省の裁量労働データのねつ造、財務省による決裁文書の書き換え…東芝という経団連会長を輩出した名門企業を崩壊させたにとどまらず、ついには安倍首相が陳謝する事態に至った。

 こうした問題が起きるたびに、組織の長がねつ造や不正を指示していたのではないか、指示していないにしてもその事実を知って放置していたのではないか、ということが争点になる。疑念の目を向けられた組織の長は、指示していない、知らなかったという意味の抗弁を繰り返すことが、お決まりの掛け合いになっている。

 しかし私は、指示していたか、知っていたかということ以前に、忖度が起きてしまった時点で、その組織の長は長たる資格がないと思う。組織の長の顔色をうかがいながら仕事をしているメンバーは、自律した思考も能動的な行動もできていない。思考停止して能動性を喪失したメンバーがただ蠢くだけの組織が、健全に成長できるはずはないからだ。

 挙句の果てに、法律に則った会計の適正処理や文書取り扱いが無視されて、組織の長の意向が忖度されて不正行為が行われる。組織の長が指示命令をしていたか、していなかったによらず、成長できない組織に至らしめた責任は甚大であり、組織の長は失格なのである。