森友学園を巡る一連の問題で、「忖度(そんたく)」という言葉が注目を浴びている。忖度は、お互いの腹を探り合うかのような、日本特有のめんどいコミュニケーション文化だ

森友学園問題で注目集める「忖度」
外国語に訳しにくい日本人らしい言葉

「忖度(そんたく)」という言葉が注目を集めている。森友学園を巡る一連の問題で、国有地払い下げや小学校の設置認可に対して官僚の忖度が働いたのではないかと疑われているのだ。テレビのニュースはどこも忖度を連呼し、すっかりお馴染みの言葉となった。2017年上半期の「流行語大賞」は、この忖度が最有力候補となりそうだ。

 デジタル大辞泉によると、忖度とは「他人の心をおしはかること」の意である。政治家からの具体的な働きかけがなくても、様々な状況から官僚が政治家の意向を汲み、便宜を図ったのではないかというのが、森友学園の問題で指摘されている疑惑だ。

 忖度という言葉は日本語独特の表現で、外国語に訳すのが難しいらしい。ハフィントンポストの報道によると、外国人記者には「surmise(推測する)」「reading between the lines(行間を読む)」「reading what someone is implying(誰かが暗示していることを汲み取る)」などと通訳されたそうだ。忖度に直接当てはまる英語はないという。

 曖昧なコミュニケーションを得意とする、日本人らしい言葉の1つと言えそうだ。

 そんな外国人には理解しづらい忖度だが、日本では仕事とプライベートを問わず、日常的なシーンで忖度をしたり、されたりが行われている。ということで今回は、忖度に遭遇したときのエピソードを、著者の周辺取材によって集めた。私たちはどのような状況で、忖度したり、されたりしているのだろうか。さっそく、チェックしていこう。

 まずは、こんな忖度の現場から。

 ある20代の女性は、彼氏がいるにもかかわらず、仕事の飲み会で出会った男性からLINEで頻繁にデートに誘われていた。仕事のつながりがあったため、無下には断れず「その日は都合が悪い」「最近、ちょっと体調を崩していて」といった曖昧な断りを入れて、忖度を促していたという。しかし男性には通じず、誘いは止まらなかった。

 最終的には、「彼氏がいるので、2人きりでは会えません」と伝えたのだが、「なら、お互い友達を呼んで会おうよ」と、男性はなおも空気を読まない発言を繰り返すばかり。今では「既読スルー」を決め込んで、諦めてくれるのを待っている状態だという。

 恋愛においては、適切な忖度が重要になる。さもなくば、ただのストーカーである。