安倍政権が目玉とする生産性革命関連法案として、今国会に生産性向上特別措置法案及び産業競争力強化法等の一部を改正する法律案がセットで提出され、現在審議が行われている。実はこの法案はよくよく見れば、あまりにも問題だらけなのである。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)

安倍政権の最重要課題の一つ
生産性向上特措法案

安倍政権の目玉政策法案に潜む「隠された別の目的」今回の法案は加計学園問題で今や渦中の人となった、元総理秘書官の柳瀬経産審議官の「肝いり」と言われている

「生産性革命」という言葉、ここ数年でよく耳にするようになった。要は生産性向上を「さらに強力に進めよう」ということのようであるが、生産性の向上自体は戦後ずっと、民間企業による取り組みを中心として進められてきた。

 生産性とは、簡単に言えば資本や労働といった生産要素の投入に対して、どの程度付加価値を創出できるのかということであり、その向上とは、投入した生産要素に対してできる限り多くの付加価値を創出できるようにすることである(その問題点等についての詳細な説明は、拙稿『ドキュメンタリー映画「THE TRUE COST」—アベノミクスへの問題提起』をご参照いただきたい)。

 そしてこの生産性革命、今国会における安倍政権の最重要課題の一つとなっており、施政方針演説の中でも次のように述べている。

「生産性革命に向けた新法を制定します。規制のサンドボックス制度(※)を創設し、既存の規制にとらわれることなく、企業が革新的なサービスやビジネスモデルにチャレンジできる環境を整えます。革新的なイノベーションに挑戦する企業には、思い切って、法人税負担を20%まで軽減します」

 さて、その生産性革命関連法案として、今国会に生産性向上特措法案(以下、「新法案」という)及び産業競争力強化法等の一部を改正する法律案(以下、「競争力強化法等改正案」という)がセットで提出され、現在審議が行われている。

 ちなみに、後者の法案は「等」とついていることからも分かるとおり、産業競争力強化法のみの改正案ではなく、中小企業経営関連法を中心に複数の法律を、今回の新法案に引っ掛けて改正しようというものである(むろん、経産省は関連での改正と説明しているが…)。

(※)特区などの地域限定で規制を一時的に止め、技術開発に取り組めるようにする制度。