(3)影響が広範囲にわたる

 さらに言えば、問題は厚生年金だけではない。健康保険から支給される出産手当金や傷病手当金、雇用保険からの失業給付金、育児給付金、介護休業給付金といった社会保険から支給されるお金も減ってしまうのだ。

 つまり、「困った時の支え」になるはずの社会保険のあらゆる面に影響が出てくるのだ。この事実を、一体どれぐらいの従業員が正しく理解した上で加入しているのだろう。

 これらのことを考えると、「確定拠出年金法」の趣旨から言っても、「加入者の利益のみを考えた運営」とは言えず、人件費を減らすという「事業主の利益」を優先させた、極めて不純な動機に基づく運営であると言えよう。

 あまつさえ「一億総活躍社会」を目指す時代においては、社会保険の制度を健全に維持していくために加入者の拡大を図り、応分の負担を分かち合うことが求められている。そうした中において、事業主の社会保険料の削減を制度のメリットとして推奨するというのは、「反社会的行為」であると言っても過言ではないと筆者は考える。

 もちろん、中小企業は経営が苦しいから、社会保険料の削減は「助かる」と言いたい気持ちは理解できないことはない(筆者もごく小さな会社を経営しているので)。しかしながら、それとこれとは話が別だ。そもそも、将来の従業員の年金が減ってもかまわないという考えで経営をするような企業に将来はないだろう。

どうせやるなら
「iDeCo」+「事業主掛金の追加」

 ただし、大企業とは違って、十分な退職給付制度のない中小企業に勤める従業員にとって、自助努力で老後資金作りのできる制度が必要なことは間違いない。だからといって、将来の厚生年金が減るというのであれば、これは明らかに本末転倒だ。